システムエンジニア(SE)と一言でいっても、仕事内容は多岐にわたります。IT業界で働く前から、どのような職種が存在するのかを知っている人は少ないです。
ただし、職種ごとの大まかな業務内容を理解していないと、採用されることすら難しくなります。
例えば、「なぜ開発者ではなく、運用SEを選択したのですか?」と面接官に問われても、それぞれの職種のことを知らなければ、明確な理由が出しにくいのです。
一方、開発者と運用SEのメリット・デメリットを把握していた場合、「開発者のように徹夜が頻繁に発生する職種ではなく、たとえシフト勤務であっても労働時間が安定している運用SEがよい」ということを上手に伝えられるでしょう。
さらに、複数の職種を知ることで、どのような形でIT業界に携わりたいかを深く考える機会になります。ちなみに、当サイトの管理人ヤマダは、深く考えずにIT業界で働き始めたため、何度も転職するハメになりました…。
あなたには、僕のような初歩的な失敗をしてほしくありません。IT業界に転職したことを、後悔してほしくはないのです。
そこでこのページでは、「IT業界の主要な職種」を紹介します。転職後に後悔しないために、まずはIT業界を深く知ってください。
Contents
開発者
SEにとっての花形職種は、何といっても開発者です。自分がプログラミングしたソフトウェアが動いているところをみると、感動すら覚えます。
ただし、開発の仕事も、業界によって給与・雰囲気・仕事内容などの特色が異なります。
そこで、開発職の中でもメジャーな分野について解説します。
Web系SE
Web系SEは、現在最も熱い分野です。消費者の購買行動が、地元の商店街から大型店舗に移行したように、現在では大型店舗からネットショッピングに移行しているからです。
また、Web系のSEになれば自分でサービスを立ち上げることもできるため、将来的に自分で事業を始めたい方にもおすすめできる分野です。
例えば、今あなたが閲覧している当サイトはWordPressというブログツールで制作しています。このツールは初心者でも簡単にブログを制作できるツールなのですが、開発言語にPHPという言語が使われています。
あなたがWeb業界でPHPを学んだら、このようなツールを使うだけではなく、自分好みにWordPressをカスタマイズすることも容易いのです。
当サイトの管理人はWeb系SEの経験がないため、WordPressの基本的な機能だけを用いて、当サイトのようなWebメディアを立ち上げています。
しかし、Web系の分野で経験を積めば、ほぼ間違いなく当サイトを軽く上回るクオリティのWebメディアを立ち上げることができます。
ほかにも、古くから存在する投稿掲示板サイト、オンライン会計ソフト、SNSサイトなど、多くの事業がWebからスタートしています。アイデアがあれば、その日から空想を実現できる場所がWebの分野なんです。
Web系SEのメリット・デメリット
メリット
スキルを積めば、自分でサービスを立ち上げられる
BtoCの企業が多く、独自サービスに携われる
女性が多い
デメリット
年齢層が若い
業界の動きが激しく、最新の動向についていくのが大変
業務系SE
業務系SEは、IT業界の中で最も仕事が安定している業界といえます。ひとことで業務系といっても、金融系のシステムから運送会社のシステムまで幅広いです。
例えば、僕がかつて勤務していた開発会社では、物流管理系システムの開発を専門に行っていました。僕が開発していたのは、新幹線の車輪や車軸を管理するシステムでしたが、すでに会社に同じようなシステムを開発したノウハウが蓄積されていたため、大きな利益を出していたのです。
そこで働く従業員も、小規模な会社ながら、平均以上の給与を受け取っていました。
このように、「開発スキル + 業務知識」を組み合わせて、自分の価値を高めていけるのが業務系SEです。
業務系SEのメリット・デメリット
メリット
文系でも挑戦しやすい
専門分野は多岐にわたるため、実力を発揮しやすい
デメリット
SI業界と呼ばれる、建築業界と同じような多重請負構造になっている業界があり、実力ではなくピラミッドのどの階層にいるかで条件が決まることがある。
SI業界の話
業務系SEの世界では、建築業界と同じようなピラミッド構造を取る「SI業界」が存在します。ITゼネコンとも揶揄される仕組みで、業界の構造を問題視する方も多いのですが、大幅に改善されたという話は聞きません。
SI業界の構造をわかりやすく図で解説すると、以下のようになります。
発注元企業は、自分で開発を行えないため、元請け企業にシステム開発を外注します。すると、元請けはプログラミング作業など、自社では対応しきれない仕事を一次請け企業に外注するのです。
そのとき、中間搾取が発生します。例えば、100万円の仕事が80万円として外注されると考えてください。
次に、一次請け企業でも同様に、自社では対応しきれない仕事を二次請けに外注します。
やはり、そのときも80万円の仕事が70万円の仕事として外注されるような、中間搾取が発生するのです。
酷い話になると、三次請けや四次請け企業まで登場し、そこで働くSEは劣悪な労働条件で働くことになります。これが、SI業界の問題点となっています。
また、上流の会社ではプログラミングなどの仕事が単純労働として認識されていて、プロジェクトのマネージメントや設計の仕事しかできません。
反対に、下流の会社では最終的なプログラミングのみを任されるため、マネジメント職へのステップアップが困難です。
このように、設計・開発・マネジメントのスキルを幅広く身につけたいSEは、転職する必然性があります。ただし、下流から上流への転職は困難なので、SI業界からは身を引いて別の業界に向かうSEも多数いるのがSI業界の特徴です。
以上のことを踏まえたうえで、SI業界で働くか否かを決めてください。
ゲーム開発者
ゲーム開発者は、現在では子供たちの憧れの的になりました。ほかのSE職種と比較すると狭き門にはなりますが、年齢が若いうちなら業界に潜り込むことも不可能ではありません。
例えば、僕がかつて通っていたコンピュータの専門学校では、ゲーム開発を専門とする学科が存在しました。その学科の中には、元々20代前半までフリーターをやっていた人間が、夢をかなえるために入学していたのです。
そこで、学年の上位一割に入っていた人たちは、ゲーム会社に就職していきました。子供のころから楽しんでいたゲームを開発できる喜びは、何物にも代えがたいそうです。
ただし、この業界は締め切り前の残業や徹夜などが当たり前になっていて、体を壊してしまう人も少なくありません。若いうちなら潜り込めるというよりは、「歳を重ねたら続けられない」といったほうが正しいかもしれません。
給与も、ほかの業界と比べて安いことも多いです。
さらに、比較的新しい業界なので、業界全体が今後どのようになるかは予測できません。
60歳まで現役の開発者として活躍しているという話を聞いたことがないので、ゲーム開発者になりたいという明確な目的意識を持っている方以外は目指す必然性がないでしょう。
ゲーム開発者のメリット・デメリット
メリット
子どもの頃からプレイしていたゲームを、開発する側になれる
デメリット
給与や勤務時間などの労働条件が悪い
定年まで働ける人が少ない
組み込み系SE
組み込み系SEは、自動車や家電などにあらかじめ組み込むコンピュータのシステムを作る技術者です。電子レンジや洗濯機は誰でも使ったことがあると思いますが、これらの家電のボタンを押すと動作するのは、内部にコンピュータが組み込まれているからです。
組み込み系SEは、プログラミングスキル以外にも、回路や電気などのハードウェア寄りの知識も必要とします。
車載機器、医療機器、家電、産業用ロボットなど、日本が世界と戦える分野で活躍できるのが組み込み系なので、業界全体に将来性があるのが特徴です。
余談ですが、僕もプログラマ時代には、組み込み系のSEと一緒に仕事をしたことがあります。僕が割り当てられた業務は、産業用ロボットが荷物を振り分ける際のアルゴリズム(処理手順)をプログラミングする業務でソフト寄りでした。
しかし、会社の先輩に頼まれて、大阪の日本橋(東京でいうところの秋葉原)に工作で使用するパーツを買い出しにいったときは、ワクワクしたものです。
僕は中学生の頃、ガンダムの主人公であるアムロ・レイがロボット的なものを制作しているシーンを見ましたが、まさにあのようなイメージで、プロトタイプが出来上がっていたのです。(ガンダムがわからない人、すみません。)
ただし、未経験から組み込み系SEになるためには、ソフトとハードの両方を理解する必要があるため、業務系SEと比べて学習量が多い傾向にあります。業務系SEと比べると、理科系よりの仕事です。
そのような試練を乗り越えられるなら、チャレンジしてみるのも良いでしょう。学生時代に理科系を選択していた方なら、きっと未経験でも乗り越えられます。
組み込み系SEのメリット・デメリット
メリット
一度、一人前になると引く手あまた
モノづくりをしているという実感がわく
デメリット
ソフト・ハードの両方を学ぶ必要があり、一人前になるのに時間がかかる
ほかのSE以上に、職場にSEの女性が少ない(涙)
社内SE
社内SEの仕事をわかりやすく説明すると、「一般企業内のIT担当」ということができます。企業によって業務内容が変わるのが特徴ですが、社内のITに関わる業務を任されると考えてください。
例えば、以下のような業務は社内SEの代表的な業務です。
- 非IT部門からの問い合わせ対応
- 社内インフラの構築や保守
- 社内システムの、「企画・開発・保守運用・改善」
ITに詳しくない社員の質問に答えたり、社内のネットワーク環境を構築したりするのは、どこの社内SEでもやっていることでしょう。
また、社内システムをどうすれば安全かつ効率的に運用できるかを考えて実践しているのも社内SEです。実際のシステム開発などは外部のシステム会社に外注することも多く、社内SEは主に企画立案・調整業務、改善提案、などを担っています。
IT業界の中では、年齢を重ねても無理なく続けることができる職種として、人気を集めています。
ただし、開発者と比べると給与が安い傾向にあります。どうしても社内SEになりたいという目的意識がないのであれば、「若いうちは開発者に挑戦して、無理そうなら社内SEになる」といった選択肢を取るのが無難です。
「開発者→社内SE」というキャリアチェンジはよく見ますが、「社内SE→開発者」というキャリアチェンジはあまり見られないからです。
開発経験があるからこそ、外部のシステム会社と折衝するときに有利に働くこともあります。例えば、機能の追加実装が難しそうかどうかも、自分が開発を経験していると、ひと目でわかります。
SEとして戦略的なキャリアを築くために、最初にどのような職種に挑戦するかも意識してください。
社内SEに関して、より詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
社内SEのメリット・デメリット
メリット
無理な残業や徹夜がほぼない
自分の好きな業界に携わることができる
デメリット
開発者より給与が安い
開発者と比較すると、技術力が劣る
運用SE
運用SEは、SEの中でも比較的技術力がいらない職種です。もちろん、LinuxOSのコマンドから運用ツールの使い方まで、覚えなければならない知識はあります。
しかし、開発者で理科系の知識をバリバリ使うSEよりは挑戦しやすい職種といえるでしょう。
運用SEは、主にオペレーター業務をこなすものと、社内の調整業務を担当するものの2種類が存在します。
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
運用SE(オペレーター)
オペレーター業務は、すでに完成したシステムを円滑に動かすために、システムの操作を行う仕事です。コンピュータで自動化できない仕事は、人の力を使います。
例えば、サーバー監視の仕事であれば、ネットワークに異常が発生しないかどうかを確認するのが業務です。
異常時はアラートが発生するため、決められた手順通りにサーバを操作する必要があります。
ほかにも、定期的に実行するプログラムを忘れずに実行したり、日常的にシステムを運用する上で発生する業務をこなしたりすることもあります。
会社ごとに仕事は異なりますが、システムを正常稼働させるために、コンピュータではできない仕事を人がやると考えてください。
また、オペレーター業務の特徴として、「シフト勤務」があげられます。
場合によっては夜勤があるため、世間の休日に合わせたい人には向いていません。
後述するネットワークエンジニアや運用SEの中でも、日勤を担当する業務にステップアップするために、オペレーターになる方が多いです。
より詳しくオペレーターのことを知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
運用SE(オペレーター)のメリット・デメリット
メリット
労働時間が決まっていて、残業が皆無である会社が多い
IT業界未経験でも採用されやすい
デメリット
オペレーターを続けていても技術が身につかない
シフト勤務だと、世間の休日に合わせられない
社内業務
運用SEの中でも、社内業務を担当するSEも存在します。オペレーターとは違い、日勤で働くのが基本です。
例えば、僕がフリーランスエンジニア時代に働いていた会社では、社員が使用するシステムのリプレース作業が進められていました。僕はそこで、Excelを使用したスケジュール管理業務や、機器導入後のテストケースの作成などの仕事を任されていたのです。
ようは、社内SEだけでは対応できないIT業務を担当していました。
企業の情報システム部が大手のIT企業に仕事を外注
下請け会社の社員や下請け会社と契約を交わしたフリーランスが、企業に常駐してIT業務を行う
大企業になると、このような仕組みでシステムを運用している会社がほとんどです。具体的には、以下の図をようになっています。
社内SEと同じように働きながらも、社内SEでは対応できない仕事に従事するため、技術力が身につく機会が多いのが特徴です。
運用SE(社内業務)のメリット・デメリット
メリット
社内SEと仕事内容が似ていることがあるが、社内SEほど人気の仕事ではなく採用されやすい
技術力が低くても挑戦しやすい
デメリット
お客様企業に常駐するため、とても気をつかう
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアとは、企業のコンピュータ同士をつないだりインターネットと接続したりする環境を整えるエンジニアのことです。
業務内容は、主に以下の3つです。
- セキュリティやコストを考えてどのようなネットワークにするかを構想する段階の「ネットワーク設計」
- 設計を元に、現地でネットワーク機器の設置や設定を行う「ネットワーク構築」
- ネットワークが正常に稼働しているかを確認する「ネットワーク監視・運用」
また、ネットワークに問題が生じたときに、原因を究明するほか、定期的な保守を行うのもネットワークエンジニアの業務範囲です。
プログラミングはやりたくないが、ほかのエンジニアと差別化できる技術力を身につけて給与を上げていきたいなら、ネットワークエンジニアをおすすめします。
現在のエンジニアの相場から考えても、開発者と遜色ない給与を受け取れるからです。
ネットワークがなくなることはこれからも考え難いため、将来性があるところもメリットです。
ネットワークエンジニアのメリット・デメリット
メリット
開発者と同様、技術力の幅が大きく、スキル次第で1000万円近い年収を稼げる
ネットワーク業界はこれからも将来性がある
デメリット
高い技術力を身につけても、自宅で仕事を行うような独立ができない
まとめ
本記事を読んで、職種の分類を理解した後でも、あなたはまだ、どの職種にするか悩まれているかもしれません。それは、間違いでもなければ優柔不断でもありません。
IT業界は、それぞれ魅力に溢れていて、どれか一つに絞るのが難しいんです!
ただし、「どの職種に就こうか?」を考えるのではなく、「自分が何を求めているか?」を基準にして考えると、自分に適した職種が見えてきます。
一般的に人が転職を決断する際、以下の3つのうち、どれかを求めていることがほとんどです。
- お金
- プライベート
- やりがい
これらの中から絶対に譲れない1つを選択して、その選択肢に合致している職種を選択すれば、あなたにマッチする職種が見つかります。
例えば、1.のお金を重視するなら、「開発者」か「ネットワークエンジニア」のどちらかが選択肢に上がるでしょう。これらのエンジニアの相場をみると、ほかのSEより給与が高いことがわかります。
2.のプライベートを重視するなら「社内SE」や「運用SE」がベストです。開発者のように無理な徹夜が発生するという話は、これらのSEではあまり聞きません。
3.のやりがいを重視するなら、「ゲーム開発者」のように憧れの業界に飛び込むのもありでしょう。
また、ゲーム会社の中には開発者だけではなく、Web担当者なども存在します。今回の記事では紹介していませんが、テストエンジニアという立場で憧れの業界と関わることもできます。
このように、あなたが職種に悩んでいるなら、何を実現したいかで決めるのが最適です。
また、どのような職種でも、IT業界が将来性を秘めた伸び盛りの業界であることは間違いありません。思い切って転職に踏み切り、10年後の成功を掴み取りましょう!