システムエンジニア(SE)は、転職市場で受け入れやすい職業です。Aという企業で身につけた技術が、そのままBという企業でも通用することが多いため、潰しがきくのです。
ただし、企業内で働くなら、技術力以外も重要視しなければなりません。キャリアを積んでいく上で、コミュニケーション能力・マネジメント能力など、技術者としてだけではなく、ビジネスマンとしても重要なスキルが存在するからです。
ここで、技術力以外の側面を学ぶ際、意識しておくべき点があります。それは、「1つの企業で長期的に働く経験が重要」だということです。
転職が容易なIT業界ですが、数年単位で転職していてはどうしても積めない経験はあります。
そこでこのページでは、「なぜ、1つの企業で長期的に働く経験が重要なのか?」と「長期的に働いても意味がない企業」について解説します。
Contents
独立志向が薄いなら、キャリアのどこかで5年以上働いておくと良い
将来的なキャリアプランに起業などが入っている場合、とにかく素早く技術力を身につけて、フリーランスエンジニアや起業家として生きていく必要があります。この場合、2~3年で会社を退職するスピード感でも問題はないでしょう。
しかし、大多数のSEは、独立志向を持っていません。定年までSEとして働くことを想定していると思います。
そして、定年までSEとして働くなら、「キャリアのどこかで1つの企業で5年以上働く」ことをおすすめします。長期的に働くことで、転職時のスキルシートには反映されないような経験を積めるのです。
その経験とは、「周囲に信頼されながら働いた経験」です。
考えてもみてください。仮に、あなたが経営者や役員のような重要なポジションだとします。
会社で重要な仕事を誰かに任せなければならないとき、誰に任せようと考えますか?
正解は、「信頼できる人物」です。
「どのような人物が信頼できると考えるか?」は企業によって異なるでしょう。
しかし、長年自社に勤めており、これからも自社を支えてくれるような人間に仕事を任せるのは当たり前のことです。つまり、1つの会社で働き続けて一生懸命仕事をするだけで、おのずと難しい仕事が回ってきます。
この難しい仕事をやり抜くことで、仮に転職する際にも、重要な仕事を任されてきた人物と評価されるのです。
具体的には、1つの企業で5年以上働くことで、以下のようなメリットを享受できます。
- 技術に精通できる
- 社内の重要な仕事を任される経験を積める
- 人を指導する経験を積める
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.技術に精通できる
SEとして同じ会社で働き続けることで、技術に精通することができます。1~2年程度の経験でも「SEとして使えるレベル」にはなれますが、5年以上の経験では、さらに「〇〇のことなら彼に聞こう」というレベルを目指せます。
例えば、以下の2人がいたとします。
A.
6年間のエンジニア経験があります。 具体的には、「Java」「PHP」「Perl」のプログラミング言語でコーディングした経験があります。多くの現場に適合できます。 B. 6年間のエンジニア経験があります。 具体的には、C言語での開発に従事していました。コーディングだけでなく、デバッグ・ソースコード解析・設計など、一通りの経験をしてきました。他のプログラミング言語を使う現場では新たな学習が必要ですが、〇〇のような現場では大活躍できます。 |
上記の2人がいた場合、Bのほうが価値が高いのです。
理由として、一つの言語を精通している人間のほうが、新しい言語を学んだ際の習熟度も高まるからです。一つの言語で深いところまで理解した実績があれば、他の言語でも深いところまで習熟します。
これは、開発系のSEに従事している人なら、わかってもらえる感覚でしょう。
開発言語が変わっても、SEがコーディングで起こしがちなミスや、システムの設計思想はそこまで変わらないものなのです。
多くの現場に通用するようになっても、結局体は一つしかありません。たった一つの職場で、「この人だけは手放したくない」と言われるような人間は強いのです。
2.社内の重要な仕事を任される経験を積める
長期的に1つの会社で働くことで、車内の重要な仕事を任される経験を積めます。長年一生懸命働くことで、周囲の信頼を獲得できるからです。
例えば、社内の新規プロジェクトの技術担当を誰に任せようかと考えた時、以下のどちらに任せたいでしょうか?
A.
技術力は文句がないが、報酬で現場を変え続けたSE。3年以上続いた現場はなし。 B. 自社で5年以上一生懸命働いているSE。これからも、会社の経営状況に関わらず、会社で働き続けることが予想される。 |
この場合、BのSEに重要な経験を積ませて、技術的に困難な場所をAにサポートさせようと考えるのが一般的です。つまり、会社は極力自社に経験がストックされるように仕事を割り振るのです。
長期的に一生懸命働くだけで、信頼を獲得して難易度の高い仕事を任されるようになります。また、1.の「技術に精通できる」とも関連していますが、技術に精通することで、安心して重要な仕事を任されることもあるでしょう。
3.人を指導する経験を積める
1つの会社で長期的に働いていたら、早ければ1年以内に後輩ができます。その後も、2年、3年と続けるうちに、後輩が徐々に増えてくるでしょう。
そのとき、先輩である自分が後輩に指導する機会は必ずやってきます。
例えば、僕であれば、後輩の強化したい行動をとにかく褒めまくることで、調子に乗らせるマネジメントを意識していました。怒声を上げて恐怖で後輩をコントロールしようとしても、後輩が楽しんで仕事をしていなかったら彼らのためにはならないと感じたからです。
さらに長期的に働くことで役職がつけば、正式に部下をマネジメントして結果を出す立場になります。そこでの経験は、転職時に大きなアピールポイントになるのです。
今では、とにかく技術に精通するスペシャリストが認知されています。
しかし、一部の大企業ではマネジメント側へのキャリアパスしか用意されていないことがあります。
年齢を重ねれば重ねるほど、それほどマネジメント経験が重要になるのです。そのため、定年まで活躍し続けたいなら、長期的に1つの企業で働くことで、指導する側の経験を積んだほうがよいでしょう。
だからといって、劣悪な環境で5年以上働く必要はない
ここまでの説明で、1つの会社で5年以上働いた経験が大切ということが理解できたと思います。
しかし、だからといって「劣悪な環境」で5年以上働く必要はありません。長年組織で活躍したいなら、22~27歳、27~32歳、32~37歳と、どの時期も適当に生きてはダメなんです!
もし、現在のあなたが以下のような会社に勤めていると思うなら、優良企業に転職した上で、再度5年以上のキャリアを積み上げてください。
- あなたの配属希望を通すつもりがない企業
- その会社での知識しか身につかない企業
上記のような企業の何が問題なのか、これから解説します。
1.あなたの配属希望を通すつもりがない企業
あなたの配属希望を通すつもりがない企業は、あなたのキャリアのことを真剣に考えてくれていない可能性があります。むしろ、会社への忠誠度を確認するために、あえて希望など無視する企業もあるぐらいです。
例えば、かつて僕がビジネスパートナーとして参画した会社では、新卒のプロパー社員が勤務地や配属部署の希望を出したものの、彼らの希望を無視した配属にしていたことがあります。
また、社内の風の噂で、その企業の役職者の発言を聞いて、僕は驚きました。
「新卒は半分ぐらい残ればいいかな」
このように言っていたそうです。つまり、大量にやめる前提の会社ということです。
通常、大企業のプロパー社員は、「会社に守ってもらえる代わりに、配属先の決定には逆らえない」という暗黙のルールで回っていることがあります。
しかし、上記の例では、「会社は社員を守る気はなく、かといって社員が積みたい経験を積ませない」ということをしているのです。
これでは、転職するのも地獄、会社に居続けるのも地獄でしょう。ある程度の年齢になってから放り出されたら、使い物にならないビジネスマンの完成です。
現在では、定年まで会社が残っているのが難しい時代です。また、会社が残っていても、常にリストラの恐怖に怯えながら生きることもあります。
そのため、自分が積みたい経験を積ますつもりが最初からないような企業では、いくら長期的に働いても人生の浪費になるのです。
2.その会社での知識しか身につかない企業
その会社での知識しか身につかないような企業も危険です。転職時にアピールできるポイントが少なくなってしまうからです。
現在では、SEと呼ばれる職種の仕事内容は幅広いです。その中には、SEとは名ばかりで、その企業特有の知識しか身につかない仕事も存在します。
例えば、とある製品が意図しない動作を起こしたときに、調査する仕事があるとします。通常のソフトウェアであれば、異常時にログが出力されるようになっており、これを調べることになるでしょう。
このような仕事の経験を積むと、その製品特有の知識は豊富になりますが、それが他の企業で役に立つ機会は少ないです。このようなシステムを開発するSEであれば、「他の企業でも引っ張りだこになるのに」、です。
同じように覚えることが山ほどある中、転職市場での両者の差は明らかでしょう。
就職した企業と心中するつもりでなければ、その企業特有の知識ばかりが身につく仕事は避けるべきです。あなたが現在覚えている仕事が、他社でも活用できるかどうかを、常に意識してください。
色々な可能性を残すのがベスト!
当サイトの管理人であるヤマダは、実は5年以上同じ企業で働いたことがありません。2~3年以内で様々な企業を渡り歩いたからこそ、自分が積み上げてきたものの限界を自覚しています。
現在は、Webサイト制作者・IT系ライター・フリーランスエンジニアと、できる仕事を全力でやっています。
しかし、これは「長期的に働いた会社がなく、スキルの一つ一つには精通していない」から、独立して何でもやるしかない状況に陥っているだけなのです。
一方、あなたが「長期的に1つの会社で働く」ことで、組織での出世という可能性を残すことができます。また、僕がやっている「独立」という選択肢を選んだ時でさえ、技術に精通している・マネジメントを経験できているなど、メリットが盛りだくさんなのです。
僕は、20代を模索し続けた結果、組織向きではないキャリアが出来上がっています。結果的には、悪い選択肢ではなかったと思います。
ただし、将来自分が何者になるのかを、早いうちから知ることはできません。
技術者としてスペシャリストになろうと思っていたが、自分よりできるSEに打ちのめされることもあるでしょう。
コミュニケーションなど嫌いだと思っていたが、案外後輩に指導するのが向いていると気がつくこともあります。
そのため、自分の中に明確な意志がない限り「色々な人生の可能性を残すのがベスト」だと、僕は経験から自信を持って言えます。
長期的に1つの会社で働くのも、可能性を残す上で非常に重要となるでしょう。
しかし、これは優良企業で戦略的にキャリアを積める場合に限ります。もし、現在働いている企業があなたの人生のことを考えてくれないなら、転職先の優良企業で長期的なキャリアを積むことをおすすめします。