世の中には、多様な働き方があります。社会的に信用されている正社員から、スキル次第で大金を稼げるフリーランスまで、多くの選択肢があるのです。
しかし、職業によっては、図書館司書のように非正規雇用ばかりの場合や、外資系金融のように激務高級以外の選択肢がないことも多々あります。
そのような仕事がある中で、システムエンジニア(SE)の仕事は、同じSEかと思えるほどに多様な働き方が用意されています。「ある時は仕事命、またある時は週3日勤務」のように、働き方を変えられるのもSEならではです。
そこでこのページでは、「SEの多様や働き方」と「働き方別のメリット・デメリット」について解説します。
Contents
正社員
正社員は、SEにとって最も一般的な働き方です。IT業界で働くなら、ほとんどの人が最初に正社員で就職します。
IT業界は昨今人手不足が深刻化しており、未経験者でも幅広く受け入れています。
例えば、以下のような求人をみると、IT業界も捨てたものじゃないと感じるでしょう。未経験でも、月給30万円からスタートしています。
未経験・学歴不問でも受け入れてくれる企業もあり、スキルがあれば高給取りも可能です。バリバリ働いてお金を稼ぎたい人は、正社員SEとして経験を積んでください。
正社員SEのメリット
正社員SEのメリットは、給与・仕事の難易度・安定性のバランスが取れていることです。近年では非正規雇用が増加しており、正社員に憧れる人も出ています。
世間的な信用が最も高いのも、正社員の特徴です。
また、年齢を重ねてマネジメント側に回るのも、大抵正社員として長年勤めてきた人たちです。中途採用の人材にいきなりマネジメントを任せる現場は、プロジェクトが炎上しているなど、ワケあり案件の可能性が高まります。
世の中的には、正社員として働いている人が多く、普通の人生を送りたいならおすすめの働き方です。
■正社員のメリット
- 給与・仕事の難易度・安定性のバランスが取れている
- マネジメント系の職種にステップアップしやすい
- 会社が不調になったときも、フリーランスや派遣社員と比べて最後まで守られる
正社員SEのデメリット
正社員SEのデメリットは、会社都合でキャリアが決まる可能性があるところです。自分は開発者になりたかったのに、運用SEの現場に配属された新人を、僕はこの目で見てきました。
正社員は基本的に、配属や転勤を断れません。住む場所や従事する仕事を会社に決められると、人生をコントロールする術を失います。
また、近年ではトヨタ自動車ですら、終身雇用が難しいと宣言する時代です。
40歳程度まで会社の言いなりになった挙げ句、あっけなくリストラされてしまう可能性があります。
そのとき、戦略的に技術を磨いてきたフリーランスと比べて、正社員は市場価値がなくなっていることでしょう。
■正社員のデメリット
- キャリアを自分でコントロールできない
- 終身雇用を実現できる会社がほとんどない
派遣社員
派遣社員は、企業からの要請を受けて、派遣会社から派遣される社員のことです。人員を要請した企業ではなく、派遣会社と雇用契約を交わしています。
正社員のように長期的な雇用を想定しておらず、数年程度働いてくれる人材を企業は求めています。
育児休暇に入った女性社員の代わりに雇用の調整弁として派遣されることもあれば、自社の人員だけではスキル不足で業務が回せない時に派遣されることもあるのが派遣社員です。
派遣SEのメリット
派遣SEのメリットは、未経験からでもIT職種を見つけやすいことです。派遣の仕事は比較的低スキルでもこなせるため、未経験でも広く受け入れています。
例えば、以下の求人は、高時給でありながらもそこまで高いスキルを求めていません。
このような仕事で経験を積むことで、その後は正社員やフリーランスエンジニアにステップアップできるのです。
ほかにも、旦那の転勤で全国を回る可能性がある女性なども、IT派遣のメリットを最大限享受できます。
例えば、旦那が数年毎に転勤する家庭においては、女性側が正社員の仕事を諦めることがほとんどです。このとき、IT派遣を選択することで、短期雇用でありながらも高時給を実現できます。
一般的な派遣は正社員より条件が悪いですが、IT派遣なら下手な正社員より好条件です。派遣会社と派遣元企業との契約もあり、正社員で発生しがちなサービス残業なども滅多に起こりません。
仕事との相性が悪ければ、すぐに現場を変更できるところもメリットです。
■派遣SEのメリット
- 未経験からでもIT業界に挑戦しやすい
- 相性が悪い仕事および企業にあたっても簡単に辞められる
- 契約によってブラック労働から守られている
- 旦那の転勤についていく兼業主婦の仕事として最適
派遣SEのデメリット
派遣SEのデメリットは、低スキルの仕事しか経験が積めないところです。派遣SEの仕事は、「外部の人間にやらせても大丈夫な仕事」であり、派遣の仕事を長年続けてもキャリア上不利になります。
特に、男性の場合、35歳以降で派遣の仕事が急減する可能性も高いです。
正社員であれば、会社にしがみつけるだけしがみつく選択肢もありますが、派遣社員の場合はいつでも切られるのが世知辛いですね…。
また、派遣社員は時間給で働くため、長期休暇で給与が下がるのもデメリットです。ゴールデンウィークや年末年始は別の短期バイトを入れて対応するなど、のんびりできない辛さがあります。
ほかにも、社会的な信用が正社員未満であり、住宅の購入や結婚などで不利になるのも派遣社員の特徴です。
■派遣SEのデメリット
- 低スキルな仕事しかできない
- 時間給のため長期休暇で給与が下がる
- 社会的な信用が正社員より低い
企業常駐型フリーランス
企業常駐型フリーランスとは、企業内で働きながらも、正社員ではなく個人事業主として契約を交わす働き方です。
「企業→フリーランスエージェント→あなた」というルートで仕事を受注できます。
働き方自体は会社員と同様であり、現場の方にも自分から言わない限り、フリーランスだと思われないこともあるのが特徴です。
企業常駐型フリーランスのメリット
企業常駐型フリーランスのメリットは、給与の手取りが高いということです。具体的には、フリーランス案件の中には、以下のようなものがあります。
これだけのお金が毎月手取りで入ってきたら、給与が足りない苦しみからは解放されるでしょう。(ただし、税金分を計算しておかないと、大変なことになりますが…)
また、会社員にありがちな「副業禁止」の規定などもなく、自由に仕事ができるのも特徴です。例えば、独立したばかりの頃は、日中は企業に常駐して、帰宅後に在宅フリーランスとして働けます。
ほかにも、自社から別企業に出向する会社にありがちな、「飲み会や勉強会などの定期的な自社イベント」にも参加する必要がありません。
基本的に、現場のほうが仲間意識が強くなるものなので、自社イベントの意味のなさに辟易している人も多いのではないでしょうか?
最後に、フリーランスになると、幅広い出費を経費で落とせるようになるのもメリットです。会社員が普通に使っているものも、個人事業主になれば経費で落とせます。
- 月々の携帯電話料金
- 書籍購入費
- 交通費
- 飲食代
このような生活に必要なものも、全て経費にできるのです。こうして、税金の額を少なくできるのは、フリーランスならではといえます。
■企業常駐型フリーランスのメリット
- 給与の手取りが多い
- 副業が自由
- 面倒な会社のイベントに参加する必要がない
- さまざまな費用が経費で落とせる
企業常駐型フリーランスのデメリット
企業常駐型フリーランスは、企業が自分を育ててくれないのがデメリットといえます。企業は、自社に長期的に利益をもたらす正社員に、重要な仕事を経験させるからです。
そこで、企業常駐型フリーランスは、現場を渡り歩いて主体的にスキルを身につける必要があります。
ただし、企業に常駐するということは、現場のエンジニアたちと一緒に働くということです。つまり、そこで現場に気に入られることで、スキルを得る機会が圧倒的に増えます。
後述する在宅フリーランスよりも、スキルを身に付けてお金を稼げる働き方です。
ほかにも、フリーランスになると「確定申告」に煩わされます。一年に一度、どれだけ稼いだかを申告して、税金を納める必要があるのです。
いくら経費でさまざまなものが購入できるといっても、レシートを保管したり申告書類を作成したりするのは、「会社員時代にはない面倒くささ」といえます。
ほかにも、会社員が強制的に加入している厚生年金には入れないため、別の年金に加入する必要があることにも注意が必要です。
小規模企業共済・民間の個人年金・株の積立投資などを組み合わせて、老後の生活に備えなければなりません。
そう考えると、いくら月々の手取りが多いといっても、贅沢ばかりはできないのが企業常駐型フリーランスです。
■企業常駐型フリーランスのデメリット
- 主体的にスキルを身につける必要がある
- 会社員には必要のない確定申告の義務がある
- 会社員とは別の年金システムに加入する必要あり
在宅フリーランス
在宅フリーランスとは、企業から持ち帰りの仕事を受注して、企業に出社せずに開発する働き方です。在宅フリーランスと書きましたが、場所を選ばないため、海外ノマドとして活動したりコワーキングスペースで仕事をしたりできます。
仕事の獲得は主に、会社員自体の人脈やマッチングサイトを利用するのが一般的です。
例えば、フリーランスのマッチングサイトでは、以下のような形で案件が募集されています。
このような小規模案件をこなすことで、お金を稼いでいるのが在宅フリーランスです。最初はマッチングサイト経由でも、仕事が信頼されたら長期的な取引になることもあり得ます。
在宅フリーランスのメリット
在宅フリーランスのメリットは、仕事量を調整しやすいところです。企業からどれだけの仕事を受注するのかは自分の裁量であり、企業常駐型フリーランスと比べて仕事の自由度が高まります。
例えば、ライバルの誰よりも稼ぎまくりたいと考えるなら、休みなく働かないとこなせない仕事を受注するとよいでしょう。
反対に、今は仕事のペースを抑えたいと感じるなら、「1年の半分だけ仕事をして残りはアジアでノンビリ暮らす」ような生活も可能です。
また、在宅フリーランスは場所を選ばないため、実際には場所を選ばず仕事をする自由もあります。現在では、インターネットで仕事が完結することも多く、海外で仕事をするフリーランスも多いです。
物価の安いアジアで暮らしながら、日本円を稼いで豪遊する生活ができるのも、在宅フリーランスのメリットです。
■在宅フリーランスのメリット
- 仕事量を調整しやすい
- インターネットさえあれば、どこでも仕事ができる
在宅フリーランスのデメリット
在宅フリーランスのデメリットは、仕事量が安定しないことです。企業常駐型であれば、企業に出社するだけで一定の仕事が降ってきますが、在宅フリーランスでは企業から案件を獲得しなければなりません。
例えば、一社から長期的に仕事を受けているだけでは、その一社との契約が切れた際、いきなり仕事がなくなってしまいます。
しかし、取引先が多すぎても、全ての仕事を受注するにはキャパオーバーになってしまいます。このとき、「仕事を断ってしまうと、次の仕事がこなくなるかも…」と心配になり、結局無理して仕事をこなす在宅フリーランスが多いのが現状です。
つまり、前述の「仕事量を自由に調整できるメリット」は、「技術力が相当高くてその人しかできない」「昔からのつながりがあって、簡単には仕事が途切れない」などの条件がないと実現しません。
また、個人で開発を受託するため、開発するソフトウェアは必然的に「小規模」になります。一生在宅フリーランスとして生きていくつもりなら問題ないかもしれませんが、万が一会社員に戻る際、大きなプロジェクトを回した経験が不足する可能性があるでしょう。
ほかにも、一人で開発していると、他人とのコミュニケーションが不足しがちになります。
ただし、常に在宅フリーランス同士でつながり、ときには複数人で仕事をこなすことで、コミュニケーション能力を維持したり規模の大きな開発にチャレンジしたりすれば、デメリットを補うことは可能です。
このように、在宅フリーランスは「営業活動から開発まで、頭を使って工夫できることが大切」といえます。
■在宅フリーランスのデメリット
- 仕事量が安定しない(営業力が必要)
- 小規模な仕事が多い
- 人との会話が不足しがち
リモートワーク
リモートワークは、従業員が出社することなく自宅などのスペースで仕事をする働き方です。基本的には決まった出社日だけ出社して、ほかの日はインターネットを通じてコミュニケーションを取ります。
例えば、ITエンジニアであれば、以下のようなリモートワーク求人があります。
リモートワークであるだけでなく、週3日勤務など働き方に多様性があるのが特徴です。
リモートワークのメリット
リモートワークのメリットは、仕事量の安定と在宅ワークの自由度が両立していることです。在宅フリーランスでは仕事量が安定せず、企業常駐型フリーランスでは自由度がないものですが、リモートワークなら美味しいとこ取りができます。
通勤せずに静かな場所で働けるメリットを、在宅フリーランス以外で享受できるのは、リモートワークならではといえるでしょう。
また、前述のリモートワーク求人のような週3日勤務であれば、残りの3~4日で自分のビジネスを持つことが可能です。
独立したばかりのエンジニアが、「リモートワーク + 自分のプロダクト」の組み合わせで、最低限の生活費を稼ぎながら自分のビジネスを拡大できます。
■リモートワークのメリット
- 仕事量の安定と在宅ワークの自由度が両立
- リモートワーク + 自分の小規模ビジネスの組み合わせで、さらに自由度が広がる
リモートワークのデメリット
リモートワークのデメリットは、会社員よりも文書によるコミュニケーションのスキルが必要になることです。会社員なら、「ちょっと、このプログラムのこの部分なんだけどさぁ~」で3秒で会話が完結するところでも、リモートでは数分~数十分かかることがあり得ます。
〇〇様
お疲れ様です。 山田です。 A様から指示を頂きましたA機能の実装に関しまして2点質問があります。 1.・・・・・・・・・・・・? 2.・・・・・・・・・・・・? 以上、回答の程よろしくお願い致します。 |
企業によっては、簡単なやり取りですら、上記のようにいちいち文章化してやり取りする可能性が出てきます。
もちろん、企業によっては円滑にコミュニケーションを取るために、オンライン会議を実施したりスカイプでやり取りしたりするなど、さまざまな施策が取られています。
しかし、リモートワークが世間に周知されてから日が浅く、企業にも適切なノウハウが蓄積されていないことも多いです。そのため、企業側がリモートワークの運用方法を頻繁に変えて、その度に仕組みに適合する必要性が出てきます。
■リモートワークのデメリット
- リモートワークを使う企業側にリモートワークのノウハウが蓄積されていない
- 文書によるコミュニケーションのスキルが求められる
自信がない人はスキルが身につく正社員として働くべき
本記事では、ここまでSEの多様な働き方を紹介してきました。他業界でよくみられる正社員と派遣社員以外にも、フリーランスやリモートワークのような、IT業界と親和性の高い働き方があるのが特徴です。
ここで、あなたはどの道に進むべきなのでしょうか?
結論からいうと、「あなたの人生の目的」によって異なるため、一概には「〇〇」になれ!とは言えません。
しかし、スキルに不安があるうちは、正社員としてスキルを獲得しながらお金を稼ぐのが最も効率的です。
例えば、正社員を経験した後に、フリーランスやリモートワークを始めるにしても、技術的に意欲的な企業で正社員として働いた経験は、「この人は優秀に違いない」という錯覚資産になります。
そして、正社員として多くのスキルを獲得したら、フリーランス・リモートワーク・起業家など、多くの世界に羽ばたいてください。