システムエンジニア(SE)の中には、現在の会社が窮屈に感じている方も多いと思います。特に、保守的な大企業での仕事や、どこかの企業の下請け仕事しかしていない場合、閉塞感を感じていることでしょう。
- 上司の承認を受けるために、複数の人からハンコをもらいにいかなければならない
- 自分のアイデアが、会社経営に反映される機会がない
- どれだけ仕事を頑張っても、同僚との給料の差が数千円しかつかない
このような悩みは、ある程度会社が成長した後、多くの企業で陥る問題です。
企業としては安定期に入っているのでしょうが、冒険心の強い人材にとっては、余計な仕事ばかりで本質的な仕事ができないと嘆くこともあるでしょう。
そこで、検討してもらいたいのが「ITベンチャー」への転職です。近年では、「スタートアップ」と呼ばれることもあります。(このページでは、「ITの分野で、新しく創業して間もない会社」をITベンチャーの定義としています。)
ITベンチャーには、「つぶれやすい」「給与が安い」「労働がハード」などの過酷な条件が付きまといます。
ただし、「変化の激しい環境で戦える」「若さがメリットになる」「上が詰まっていないので、昇進がはやい」「経営者との距離が近い」など、通常の企業では考えられないメリットも多々あるのが特徴です。
冒険心が強いSEなら、ITベンチャー企業に挑戦して、ビジネスの分野で成果を上げるのも選択肢のひとつになります。
そこでこのページでは、「ITベンチャーに就職する魅力と注意点」について解説します。
Contents
ITベンチャーに就職する魅力
ITベンチャーへの就職は、通常の企業には考えられない魅力が溢れています。たとえ苦労が多くても、ビジネスの単位が小さく、会社の成長を自分が作っていることを実感できるのは、ITベンチャーにしかない魅力です。
当サイトの管理人であるヤマダも、コンピュータの専門学校を休学して、ベンチャー企業に挑戦しました。新卒切符を捨てた形にはなりましたが、それ以上に多くの成長を成し遂げてきました。
そこで、まずはITベンチャーの魅力を端的に説明します。具体的には、以下の3点はITベンチャーの大きな魅力です。
- 与えられた仕事をがむしゃらにこなせば、スピード出世も可能
- 会社の成長過程で働ける
- 組織の風通しが良い
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.与えられた仕事をがむしゃらにこなせば、スピード出世も可能
あなたが仕事にやる気を持ち、ハードな仕事をこなせるポテンシャルを備えていた場合、スピード出世も可能です。ベンチャーには優秀な人材が集まりにくいため、創業者と同等のやる気で仕事をこなす人間には、より多くの仕事が回ってくる可能性が高いからです。
そこで成果を上げれば、何かしらの役職がつくことが頻繁にあるのです。
例えば、僕が初めて就職した「古本販売系ベンチャー企業」では、入社時には社員が3名程度しかいない組織でした。
当時は、「古本買い付けのための車を持参可能」「応用情報技術者を取得できるITリテラシーがある」という利点を掲げて入社しました。
組織が出来上がっていない状態で、僕は以下のような仕事を任されていました。
- 古本の買い付け
- 顧客からのクレーム対応
- 古本の出品業務
- 自動出品ソフトの不具合修正
- 業務マニュアル制作と新人教育
- 社内インフラ整備
- 人材採用業務
全ての業務をがむしゃらにこなすうちに、気がついたら社内のまとめ役になり、内勤リーダーを任されるまでになりました。
このように、組織が出来上がっていく途上にあるベンチャー企業では、先に入社して一生懸命仕事を頑張っているだけで、より高いポジションにつける可能性があるのです。
ただし、「会社の成長についていく気概を持つ必要がある」ことには注意してください。
会社が成長すると、今までよりレベルの高い人材が入社してきます。レベルの高い人材から、「なぜ、この人の元で働かなければならないのか?」と思われないように、常に自己成長してください。
会社の黎明期を支えたからといって、そこに甘えて自己成長を怠れば、いずれ降格させられることになるでしょう。
2.会社の成長過程で働ける
会社の成長過程で働けるのも、ITベンチャーの魅力の一つです。会社の利益につながるなら、どんどん新しいことに挑戦していく文化で働けます。
通常、会社の成長が鈍化して事業が安定してくると、安定志向の人材が企業内に増え始めます。すると、物事を変えようとする動きに対して、「とにかく反対する勢力」が現れるのです。
- 定年までもう少しなので、会社を変えようとするのではなく、逃げ切ることしか考えていないから反対
- 嫌いな人間が活躍するのが気にくわないから反対
- 自分がよくわからないこと(SNSを用いたIT戦略など)をやろうとしているから反対
このような、理由になっていない理由で反対される経験は、保守的な企業に勤めているなら経験したことがある方が多いでしょう。
一方、ITベンチャーでは、これから会社の仕組みを作っていく途上にあります。そのため、新しい提案も受け入れられやすいのです。
例えば、僕がITベンチャーで働いていた頃、従業員の作業スピードに違いがあるのが気になっていました。当時は会議を行うような雰囲気はなく、言いたいときに言いたいことをいう文化で仕事をこなしていました。
しかし、リーダーの立場として、従業員の仕事を観察していると、ある従業員の施策がとても素晴らしく見えました。
そこで、社長に相談して、お互いの仕事の進め方を確認する機会を設けました。そこで、従業員同士の工夫を共有することで、作業スピードが一定化して、誰がやっても均一かつ質の高い成果が出るようになったのです。
さらに、その作業をマニュアル化することで、新入社員であっても、レベルの高い社員と同じ成果が出せるように工夫しました。
このように、自分の提案で会社の業務が改善されるところを見ていると、自分が会社を作り上げている一部だと強く認識できて、自己成長を実感できるのです。
3.組織の風通しが良い
組織の風通しが良いのも、IT系ベンチャーの特徴です。社長と社員との距離も近く、組織もガチガチのピラミッドになっていないからです。
大企業のように、複数の承認者から判子をもらう「スタンプラリー」を行う必要がありません。
例えば、僕がIT系ベンチャーで働いていた頃、ウォーターサーバーの営業がきたことがありました。
そこで、僕と同様に内勤のリーダーを任されていた社員の一人が、「ウォーターサーバーは便利だ!」と考えて、一ヶ月の無料期間があると聞いたこともあり、勝手にウォーターサーバーを設置してしまいました(笑)
「おいおい、大丈夫なのかよ…」と僕は感じたものです。
ただし、その内勤リーダーは何とも思っていません。社長が出社したあと、「いかにウォーターサーバーが必要か」を力説して、結局常備されることになりました。
それ以降も、福利厚生が充実していくところをみて、会社にがつがつ要求することの重要性を認識したのです。
よく言えば風通しが良い。
悪く言えば雑。
「ベンチャーって色んな人がいて楽しいなぁ」と実感したエピソードでした。
ITベンチャーには、お堅い人が少ない?
ITベンチャーには、俗にいう「お堅い人」が少ないです。ここでいうお堅い人とは、「仕事中は必ずスーツで」「ストライプの入ったシャツやスーツは禁止」「腕時計の文字盤は、シャツからはみ出ないサイズで」などのように、服装や言動に相当な制限を加える人のことです。
ITベンチャーの場合、このようなルールにはこだわらない傾向があります。
特に、若者が集まるWeb系企業の場合、「Tシャツ信仰」のようなものがある企業まで存在します。
本来なら、服装自由であれば「オフィスカジュアル」でも可能なはずですが、「ラフな格好でなければならない!」という強迫観念の元、Tシャツ以外許さない雰囲気がある企業も実在するのです。
これはある意味、形を変えた「お堅い人」という笑い話です。
しかし、そこまでではなくても、「客先に向かう可能性があるので、真夏でも背広は持っていくように」などの非合理的な文化が存在しないだけでも、快適に働けることは間違いありません。
ITベンチャーに就職する注意点
ここまでは、ITベンチャーの魅力を語りました。
しかし、ITベンチャーには魅力があるのですが、転職の際は、いくつか気を付けるべき注意点があります。そこを注意しておかないと、転職後に後悔することになりかねません。
具体的には、以下の2点は必ず意識しておいてください。
- キャリアや世間の目を意識するならベンチャー風大企業
- ゴリゴリのベンチャーなら社長の実力がすべて
転職後に間違った選択肢だったと思わないために、これから解説することを見逃してはいけません。
1.キャリアや世間の目を意識するならベンチャー風大企業
あなたが現状、世間体の良い大企業などに勤めているなら、ベンチャー企業に転職する前に、転職の目的を再確認してください。
ベンチャー企業への転職は、以下のような危険性があるからです。
- ベンチャー企業への転職には、危険が満載だからです。
- ビジネスモデルが貧弱。または、ビジネスが1つしかない
- 突然、大企業が同じビジネスに参入してくる
- 数ヶ月キャッシュが入ってこなくなっただけで、給与の支払いが遅れる
- 給与が安い
- 大企業の人材と比べて、癖が強い人が多い
- 安定した大企業に再転職しにくい
つまり、会社がつぶれやすく、人材のレベルが低く、会社のリソースもないに等しい場所で、戦うことになるのです。
生半可な気持ちでベンチャーに挑戦すると、後で必ず後悔します。
以下のような意図があって、初めて検討する価値があるでしょう。
- これから伸びていくビジネスモデルだと判断したので、転職した
- 会社が潰れても、すぐに再就職できるスキルが身に付いている
- 現状の会社は、どうせ倒産するから、伸び盛りの会社に転職したい
- 学歴も職歴もないから、大企業には入社できそうにない。だから、ベンチャーで仕事を頑張って成功したい
それでも、ベンチャー企業のようなイケイケの職場に転職したいのであれば、キャリア形成などを考えて、「ベンチャー風大企業」を選択することをおすすめします。
ベンチャー風大企業とは、僕の造語です。
「大企業と同等の規模を持ちながらも、ベンチャーのようなチャレンジスピリットを有している企業」を指しています。
例えば、僕の尊敬する経営者の方に、GMOインターネット株式会社の熊谷正寿社長がいます。
学位もない中で、とんでもない実力をもってIT業界をかけ上がった人物です。そして、凋落激しいIT業界で、常に企業を成長させています。
僕のような小物では、とうてい会ってもらえないような立派な経営者です。
この方が経営するGMOインターネットグループは、「スピリットベンチャー宣言」という企業哲学を掲げています。
大企業グループになった今でも、グループ企業をどんどん設立して、インターネットコンツェルンを作り出す構想を掲げて経営しているのです。
このような企業に挑戦すれば、ある程度の労働条件が保証されながらも、新しいビジネスを立ち上げていく環境で働けるでしょう。
2.ゴリゴリのベンチャーなら社長の実力が全て
倒産リスクや激しい働き方を考慮した上で、それでも本当のベンチャー企業で働きたいという方もいます。そのときは、「社長の実力」を正しく見極めるようにしてください。
ベンチャー企業は、通常の会社以上に、社長の影響力が強いです。創業者と社長を兼任していることがほどんどで、人生をかけるつもりで経営しています。
そのため、「会社の存続や事業が拡大していくかなどは、社長の実力によって決まる」といっても過言ではありません。
ここで、社長の実力を見極める方法や基準は多岐に渡ります。人それぞれ、相性もあるでしょう。
例えば、僕なら以下のようなことを気にします。
- どのような学歴か?(どのようなことを学んできたか、バックグラウンドを知りたい)
- どのような職歴か?(技術者出身なら、技術力が高い? 営業出身なら、体力勝負かも…。)
- どうして会社を創業したのか?(社長の夢や、目指している場所はどこか?)
- 何のために、その事業を経営しているのか?(事業の存在意義を語ってもらい、情熱を費やしているか探る)
このように、社長の本質的な部分を探り、社長の実力を見極める必要があります。言い換えると、あたかも投資家のように「この人に出資できるか?」という観点で、社長の人柄を見るのです。
例えば、社長の本音が贅沢することにあるのなら、数億~数十億円の資産ができたところで、会社の成長が止まってしまう可能性が高いです。
「消費」にお金を費やしたいだけなら、その程度の資産で死ぬまで贅沢できるからです。
しかし、社長が会社を創業した目的が、「次世代のソニー」を生み出すことにあるとします。この場合、会社が上場した程度では満足せずに、より一層、事業に邁進することが考えられます。
この社長は、稼いだお金を「生産」や「投資」に活用し始めるはずです。
もちろん、気持ちだけでは不十分であり、大きな目標を達成するために伴った実力が必要です。ただ、社長が考えている以上には事業が大きくなりにくいため、このような判断基準も大切です。
また、現在の事業だけで、会社の実力を判断するのは早計です。社長が次々に新しい事業を立ち上げる人の場合、チャンスは増えていくからです。
例えば、僕が勤めていたITベンチャーは、最初は中古本のネット販売事業のみを行っていました。
しかし、その後は以下のような事業を次々と立ち上げています。
- 誰でも中古本販売業を開始できるシステムの販売
- 美容院向けの予約システムの販売
- 複数事業を立ち上げた経験を元にした、起業家セミナー事業
このように事業を複数立ち上げる中で、次々に事業を任される責任者のポストが増え続けていったのです。
現在の事業だけではなく、社長が会社をどのように成長させていくのかを、注視するようにしてください。
最後に
IT系ベンチャー企業といっても、業態はさまざまです。IT業界ひとつとっても、Web系と業務系ではお作法が全く異なるため、今までの経験がそのまま生かせるとは限りません。
しかし、SEとして働いてきた経験があれば、「Excelでマクロが組める」「プログラミングでツールを制作できる」など、生産的なスキルを多数身についていることが考えられます。
フリーランスで仕事を得れば単価が50~60万円を超えるような人材が、ITベンチャーに入社した場合、重宝されることは間違いないでしょう。
今日も世界のどこかでは、次世代の偉大な企業を生み出すために、ベンチャー社長が誕生しています。
社長の実力を見極めた上で、あなたの力をITベンチャーに貸してあげる人生を検討してみてはいかがでしょうか?