ITエンジニアの仕事は、3K「きつい・帰れない・給料が安い」の仕事だと言われてきました。ソフトウェアの急な仕様変更や無理な納期に間に合わせるために、寿命を犠牲にしてきたITエンジニアも多いです。
現在でも、IT業界を少しでも知っている人であれば、「ITエンジニア = 忙しい」と思い込んでいる人もいます。
しかし、IT業界全体がイメージの改善に努めたほか、昨今のITエンジニア不足も合わさり、ITエンジニアの忙しさはイメージほどではありません。
仮に、運悪く長時間労働の現場に当たってしまっても、市場価値の高いスキルを身につけていれば、すぐに現場を変えられるのがITエンジニアの良いところです。
どのような職種でも激務の現場はありますが、ITエンジニアはそこから逃れる手段があるといえます。
もし、現在のあなたが忙しい現場で激務に追われているなら、ブラック企業から不当に扱われている可能性が高いです。そこでこのページでは、「ITエンジニアが忙しくなる理由」と「激務から逃れる方法」について解説します。
特に、給与が高くないのに忙しい現場なら、少しの努力で労働の負荷が軽減されることでしょう。
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なぜ、忙しいITエンジニアが存在しているか?
突然ですが、IT業界の徹夜労働などの話は、ほぼ確実に盛られています(笑)。あるいは、仕事のできない(クソ現場以外では通用しない)ITエンジニアが、ネットで悪態をまき散らしているといってもよいかもしれません。
当サイトの管理人ヤマダは10年ほどIT業界にいますが、残業時間が20時間を上回った経験は、創業間もないITベンチャーで働いていたときぐらいです。友人のITエンジニアも、多くても月数十時間の残業で仕事を終えています。
一方、フリーランスエンジニアになってから、フリーランスエージェントの営業と話をしていると、彼らは夜の22時頃まで仕事をしているのが日常的なようでした。
IT営業では歩合制になっていないことも多く、大抵の会社の営業社員は同じような待遇で働いています。
それと比べるとITエンジニアの仕事は、忙しい現場とそうでない現場で差が激しいです。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか?
それは、大きく分けて以下の3点に集約されるでしょう。
- 技術力が足りない
- 無理な納期・急な仕様変更があるなど、プロジェクトがグダグダ
- 会社の役職者が現状を変えるつもりがない
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.技術力が足りない
あなたの技術力が足りない場合、業務が忙しくなる可能性があります。ITエンジニアの生産性は、人によって数倍以上も違うことが頻繁にあるからです。
例えば、僕が新人プログラマとして転職した企業では、先輩と僕の間に3倍以上の生産性の違いがありました。
僕が3時間かけて作ったプログラムがバグまみれだったのですが、同じものを1時間で完成させたときは、実力の違いに絶望したものです。
このように、技術力が足りないことで、人より仕事が遅くなることがあります。
また、「自分に技術力が足りないから忙しいのか?」は、同僚や先輩の仕事と比較すれば、大体把握できるでしょう。会社によっては、生産性の違いをデータで明示することもあるぐらいです。
しかし、新卒で入社した企業の場合、会社全体のレベルの低さには気づけないこともある点には注意が必要です。
一般的には、現場のエンジニアが全員疲弊していたら、会社のどこかがおかしいと気がつきます。僕も転職先のブラック企業っぷりは、前職との比較で決めていました。
これが、新卒で入社したITエンジニアになると、社外の比較対象がありません。そのような現場で先輩社員が、「ここで通用しなかったら、どこに行っても通用しない」といえば、「あぁ、先輩の言う通りなのかぁ…」と考えてしまいます。
結論からいうと、「ここで通用しなかったら…」のセリフは、あなたをブラック企業から辞めさせないための常套句のようなものです。
管理人がブラック企業から逃れた話と、転職に失敗しない方法を知りたいなら、以下の記事も参考にしてください。
自分の会社のレベルは、他の現場を経験していなくても、ITエンジニアになった友達や社外勉強会などの交流である程度判別できます。
例えば、仲の良い同級生なら業務量や年収の話でも、あけすけに話しやすいでしょう。社外勉強会などで出会ったITエンジニアの実力をチェックして、どのような働き方をしているかが分かれば、自分が正当な給与を受け取れているかどうかも検討がつくものです。
もし、そのような人脈がないというなら、転職エージェントに相談してみてください。現場のPMと対等に話せるようなキャリアコンサルタントが在籍しているSE専門の転職エージェントなら、あなたの市場価値を正しく判断できます。
また、優良転職エージェントでは、ITエンジニアを無理に転職させても悪評が立つだけだと理解しています。そのため、あなたが転職すべきかどうかを、案外冷静に判断してくれるのです。
ITエンジニア専門の優良転職エージェントを知りたいなら、以下の記事を参考にしてください。
2.無理な納期・急な仕様変更があるなど、プロジェクトがグダグダ
IT業界は、「無理な納期・急な仕様変更」などと切っても切れない関係があります。特に、商品のリリース日が決まっている業界では、ITエンジニアの犠牲によって成り立っているところがあるのです。
例えば、家庭用ゲームの世界では、ある程度ゲームが完成すれば発売日が決まってしまいます。一度発売日が決まれば、何としてでもその日までに完成させなければなりません。
今でこそ、ネットのアップデートでバグを修正するようなことも当たり前になりましたが、家庭用ゲーム機がネットにつながっていなかった頃は、さぞ凄まじかったことでしょう。
管理人が専門学校生時代に講師から聞いた話では、「今からROM(ゲームのカセット)にデータを書き込みに行くぞ!」ということになり、車の中で最後のデバッグをしていたところ、大きなバグが見つかったそうです。
「その時は会社にUターンして、夕方までにバグを直して、ギリギリセーフで間に合ったんだよ…」と語る講師は、何とも言えない表情をしていました。
ほかにも、ソフトウェア業界は建築業界と対比して語られることが多いですが、ソフトウェア開発の場合「最悪、後戻りして仕様を変更できる」という違いがあります。
コンクリートを一度固めてしまうと元に戻せない建築業界とは違い、ソフトウェアは一度作ったものを何とか変えられる(ITエンジニアが死ぬ思いで変える)のです。
しかし、そこでウォーターフォール型開発のように、仕様変更に対応しにくいモデルで開発を進めていると、多くのスケジュール変更が余儀なくされます。
さらに、納期が動かせなくなったり修正の予算がつかなかったりすると、無事に炎上プロジェクトの完成です。
3.会社の役職者が現状を変えるつもりがない
会社の役職者が現状を変えるつもりがないときも、現場が忙しくなりがちです。現場が忙しくなっているなら、「業務量が多すぎて人員が足りない」「業務が体系化されていない」「プロジェクトに無理な納期が設定されている」などの問題が発生しています。
これらの状況を、気合で乗り切らそうとする人間が人の上に立つと、多くの不幸が起こるのです。
例えば、僕がフリーランスエンジニアとして入ったプロジェクトの一つに、ITエンジニアのことを消耗品としてしか見ていない企業がありました。
実際にその企業では、課長クラスの人間が「今年の新卒は半分残れば良いほうかなぁ(笑)」と言っていたそうです。せっかく入社してくれたITエンジニアの半分が消えてしまっても、何とも思わない体質に辟易するしかありませんでした。
ちなみに、僕もその課長の面接があって入社したのですが、面接時に聞いていた仕事とは全く違う、非ITエンジニアの仕事に配属されたのです。
しかも、その部署に配属された理由を探ったところ、「人が足りてないから」という理由であることを突き止めました。面接で説明した仕事をやらせずに、騙してまで無理やり人員を補充する企業だったのです。
その配属先も、新人が全く定着しない現場で、ありとあらゆる協力会社から人を呼んでいました。それでも悪評が立ちすぎて、全く人が集まっていなかったのが特徴的でした。
「ブラック過ぎて人が集まらないから、ITエンジニアとして採用した僕を非ITエンジニアの仕事に就かせたのだなぁ…」と、怒りを通り越して呆れてしまい、契約期間終了後は即座に別現場に移りました。
僕がフリーランスエンジニアだったため簡単に抜け出す決意を固めましたが、新卒で入社したITエンジニアのことを考えると、今でも不憫だと思っています。
このように、会社の役職者が忙しさを変えようとしないなら、現場でいくら頑張っても意味がないことが多いです。このような場合、ブラック企業にはNOを突き付けて、ITエンジニアの労働環境を守っている企業に入社してください。
ブラック企業を正確に見極める方法を知りたいなら、以下の記事も参考にしてください。
どれくらいの労働時間なら、忙しい部類に入るか?
ここからは、「どれくらいの労働時間であれば、忙しいといえるのか?」について考えていきます。
残業時間が全くない場合、一ヶ月の労働時間は以下のようになります。
1日8H × 20日 = 160H
そこに、過労死ラインである月80H以上の残業を加えて、一ヶ月間で240H以上働くことが普通になっているなら、その職場は間違いなく危険です。
上記の例では、1日12時間労働、言い換えると9時から21時まで働いています。
これに通勤時間を合わせると、自宅には寝るためだけに帰っているような状況です。
これでは、「生きるために働いているのか、働くために生きているのか」と揶揄されてもおかしくないような人生でしょう。
あなたが、このような現場で働いているなら、まず間違いなく経営者にコキ使われています。過労死してしまうレベルの業務を負担させられている時点で、誰に何を言われようとも職場を変えるべきです。
(本当に自分がやりたいことをやっていて、残業する意義があるのなら、無理に否定はしませんが…)
また、管理人ヤマダの個人的な意見をいうと、「経営者は、余暇の時間にITエンジニアがスキルアップできる程度の業務量に抑えるべき」だと思っています。
「余暇の時間にスキルアップできるか?」という観点から、引き続き適正な労働時間を考察してみましょう。
例えば、7時に起きて23時に寝る生活だと仮定した場合、1日16時間与えられています。
- 労働時間が8時間
- 会社の休憩時間1時間
- 通勤が往復2時間
上記の時間をマイナスすると、後は5時間しか残っていません。
そこからさらに
- 余暇を楽しむ2時間
- スキルアップ1時間
- 家事や自炊などに使う1時間
ぐらいは、確保したいところです。すると、1時間しか余りがでません。
つまり、1日1時間までの残業(月20時間)なら許容範囲といえるのです。
それ以上の残業が当たり前になっている現場で働くと、体力が低下する30代以降で辛くなったり市場価値のない(スキルのない)エンジニアになったりすると考えられます。
休日にも仕事の連絡が入る現場は要注意
休日にも仕事の連絡が頻繁に入る現場は要注意です。それも、マネージャーや役職者クラスではなく、下っ端クラスのITエンジニアに電話がかかってくるような現場はブラックの疑いがあります。
例えば、当サイトの管理人ヤマダが普段働いている運用SEの職場では、土日や夜間帯でも運用SEが働いています。このとき、システムにエラーが発生したら、たとえ休日であろうがマネージャークラスに連絡が入ります。
これは、ブラックとは言えないでしょう。会社の上の立場の人たちが、休日にも関わらずシステムのために動いているのだから、むしろ立派な企業体制であるという印象を受けます。
一方、僕が以前働いていた別の運用SEの仕事では、何かあっても下っ端社員に全ての負担がかかってくるようなことがありました。電話で呼び出されるのも、全て役職のついていない運用SEです。
安い給料で働いているのに、休みまで満足に取れず、最終的に彼はうつ病になってしまいました。それにも関わらず、役職者の考えは、「マニュアルがあれば、別のSEにも同じ仕事はできるはず」という一点張りで、状況が改善される見込みはなかったのです。
具体的な企業名を出すのは避けますが、管理人ヤマダの怒りが収まっていないことは、文面からも理解して頂けるのではないかと思います!
あなたが休日に満足に休めない職場で働いているなら、今すぐ転職を検討してください。
ITエンジニアが激務から逃れる方法
ここからは、ITエンジニアが激務から逃れる方法を解説していきます。結論からいうと、「会社を変えるのがベストな場合が多い」というのが僕の肌感です。
もちろん、現場の仕事が効率化されていないなら、現場のITエンジニアによって改善されるべきでしょう。僕はいくつもの運用SEの現場を経験していますが、ホワイト企業だと感じた現場ではExcelのマクロや自動化ツールを活用することで、作業の効率化を果たしていました。
しかし、現場のITエンジニアがどれだけ頑張っても、改善できないことがあります。
- そもそも業務量が多すぎる。人員を増やす必要があるが、儲かる仕組みができていないため、人員を増やせない
- 業態上、土日祝でも遠慮なく仕事が発生する
- サービスの性質上、厳密な納期が発生する
このような状況を、ITエンジニアの努力で改善できることは少ないのです。
そこで、以下の2点を重視して、現場を変えてください。
- 忙しくない職種に転身する
- 忙しくない現場に転職する
それぞれ、詳しく解説させて頂きます。
1.忙しくない職種に転身する
忙しくない職種に転身するのは、最も簡単に激務から逃れる方法です。開発職ではどうしても無理な納期等が発生してしまいますが、開発以外の職種では納期がないこともあるからです。
例えば、土日の出勤がOKなら、運用SEの仕事に向いています。休日に仕事をしなければならない一方、業務量や労働時間が予測できることが多く、無理な残業が発生しません。
現に、僕も運用SEとしてシフト制(日勤専属)で働いていますが、退社時間には夜勤専属のエンジニアと交代するため、残業が一切発生しないのです。
また、運用系の仕事は業務が定型化していることもあり、Excelのマクロや自動化ツールで業務を効率化しやすい傾向にあります。
なお、休日に出勤するということは、平日に休めるという事実に他なりません。世間の混雑を回避して旅行したり日中に銀行や役所に行ったりできるため、世間的な休日に合わせる必要がないなら満足度も高いです。
ほかにも、社内SEに転職すれば、運用SEと同様に忙しさから回避できる確率が高まります。特に大手の社内SEであれば、開発などは外注を活用していることがほとんどであり、調整業務などが主な仕事になるのです。
以下の求人を見てもわかるように、開発者を経験していれば社内SEに転職するときに優遇される傾向もあります。
社内SEの業務について詳しく知りたいなら、以下の記事も参考にしてください。
ほかにも、IT業界での経験を活かして、IT系学校の講師になる道も存在します。マネージャーを目指すほどではないけれど、後輩に指導するのが得意だったITエンジニアなどは、適性があるでしょう。
以下の求人のように、時間に制約があるITエンジニアを許容する求人も存在します。
なお、IT業界の技術は日進月歩で移り変わるため、年配のエンジニアより自分のほうが技術に精通しているような逆転現象が起こりえます。僕も専門学校で教育を受けた経験がありますが、若手の講師がベテランより人気が高いことがよくありました。
このように、労働時間があらかじめ決まっている職種で活躍することで、激務から逃れることができるのがIT業界です。
2.忙しくない現場に転職する
忙しくない現場に転職するのも、激務から逃れる方法です。忙しいかどうかは企業の体質に依存するため、会社を変えるより現場を変えるほうが手っ取り早いからです。
しかし、「どのようにして、忙しくない現場を引き当てるの?」と疑問に思うことでしょう。
ひとつの解決策として、転職エージェントに相談する方法があります。
転職エージェントは、以下のような仕組みで求職者を支援する人材企業のことです。
応募者が多数になる人気求人や、新規事業のための人材が欲しいことをライバルに知られたくない企業の求人を取り揃えているのが、転職エージェントの特徴です。
また、転職の経験が不足しているITエンジニアに対して、転職相談に乗ったり履歴書添削や模擬面接を行ったりしてくれるのも、転職エージェントの心強い所です。
なぜ、彼らに転職を相談することが、激務から逃れる方法になるのでしょうか?
それは、まともな転職エージェントであれば、関係の深い企業に対して複数人のITエンジニアを採用させた実績があるものだからです。
転職エージェントは、転職後のITエンジニアからヒアリングすることで企業の実態なども正確に把握しているため、忙しい現場とそうでない現場も容易に把握しています。
転職エージェントのネットワークを生かして転職することで、企業が発表している情報では分からない実態を把握してください。
また、「暇な現場で働きたい」と正直に伝えると、「真面目に仕事をしないのかなぁ?」と悪い印象を与えてしまいます。本音では業務量の少ない企業で働きたくても、伝え方には気をつけるようにしてください。
例えば、以下のように伝えれば、悪い印象を与えないでしょう。
現在は、残業時間が多すぎるため、業務時間外にスキルアップする時間がありません。これでは、今の現場で活躍できていても、会社に依存するしかないITエンジニアになってしまいそうで不安を感じているところです。
そこで、一時的に業務量の安定している会社に転職したいと考えています。 ここで業務時間外で磨いたスキルで会社に新たな価値を提供したり、会社内の忙しい現場に入ったりすることで、より会社に貢献できるITエンジニアになります。 |
上記の言い方には、以下の要素が含まれています。
- スキルアップが自分のためだけではなく会社のためであること
- スキルアップしたあかつきには、会社により高い価値を提供できること
これは、「業務量が少ない企業に転職したい理由」として十分なものです。もちろん、あなたが上記の例以外で「業務量が少ない企業に転職したい理由を説明できるなら、そちらで転職エージェントを納得させてください。
最近はIT業界全体で無理な労働は改善されている
一昔前のIT業界では、残業・徹夜が当たり前の過酷労働がまかり通っていました。それが原因でIT業界全体のイメージがダウンしてしまったのは、まぎれもない事実です。
優秀な人材が集まらなくなり、日本初の世界的なIT企業が出てこない状況が続いています。
そこで、IT業界が労働環境を改善してイメージアップを図った結果、近年では「中学生男子が将来なりたい職業ランキング」でITエンジニアが1位になるなど、ITエンジニアが憧れの存在になっています。
だからこそ、あなたが劣悪な労働環境で働いているなら、少しでも条件の良い企業に転職してほしいのです。
現場のITエンジニアという立場では、なかなか企業体質を改善する影響力を持てません。ただし、ブラック企業に人が集まらなければ、必然的に「会社が潰れるか労働条件を上げるか」しか手段がなくなります。
ITスキルを持ったあなたが、自分を安売りせずに正当な労働環境で働こうと行動を起こすことは、IT業界の健全化につながるのです。
「中学生男子が大人になったときにIT業界に希望を持てるような社会」を、転職によって作り出しましょう。