人生の大半を会社で過ごすサラリーマンにとって、入社する会社選びは重要です。転職が珍しくないシステムエンジニア(SE)の世界であっても、条件の良い会社でキャリアを積んだ方が、その後の転職も有利に進みます。
それでは、「条件の良い会社」とは何でしょうか?
結論からいうと、会社があなたに与える業務と、あなたがやりたいことが一致している会社が条件の良い会社です。例えば、技術力を身につけて業界を渡り歩きたいなら、「最新技術を使っているプロジェクトに参画できるか?」がポイントになります。
SEが転職する際、前職に不満を溜めて逃げるように転職しても、次の職場で別の不満が発生するかもしれません。
そうならないためには、転職に明確な目的意識を持ち、目的を達成できる会社を選び出す必要があります。
そこでこのページでは、「SEが転職先の会社選びで気をつけるべき5つのポイント」を解説します。
Contents
身につけたい技術を使えるか?
あなたが身につけたい技術を使って仕事ができるかどうかは非常に重要です。スキルを獲得するとき、独学で学んだだけなのか、業務として取り組んだことがあるのかは大きな違いがあります。
例えば、転職で作成する職務経歴書の欄にも、「どのような開発言語を使って何年程度業務を経験したか?」を記載する項目は必ず存在します。転職市場ではポテンシャルよりも実績が重要視されるため、面接官は必ず経験したプロジェクトを確認するのです。
業務経験者でスキルを積み重ねていれば、転職市場で引っ張りだこになります。
「身につけたい技術を使えるか?」を意識するなら、企業名や給与ではなく、「自分が身につけたい技術を使えるプロジェクトに参画すること」が条件の良い会社になります。
なお、企業によっては、採用した社員をどこに配属しようが勝手だと考えるところもあります。
転職時には、以下のメッセージを発信して面接に臨む必要があるでしょう。
- 自分は〇〇という技術を独学で学んでおり、そのスキルを使える仕事を探している
- 〇〇という技術が使えるプロジェクトに配属されないなら、入社するつもりはない
転職は、多くの企業から内定を得ることが目的ではありません。上記のメッセージを発信することで、使い勝手の良いSEが欲しい企業からは嫌がられます。
しかし、「〇〇という分野に関心を持っているSEが欲しい」と考える企業と1社でも巡り合えたら、理想の転職が実現するでしょう。
事業内容は魅力的か?
事業内容が魅力的かどうかも、SEにとって重要です。自分のやっている仕事を、誇りを持って世間に紹介できるほうが、モチベーションが高まるからです。
例えば、僕は以前、大手官庁系のプロジェクトに参画したことがあります。世間的には安定した職場で安定した仕事をしていましたが、一切チャレンジ精神のない業務内容でした。
プロジェクト全体に減点主義のようなものが漂っており、「とにかく新しいことはするな!前例があることだけをやれ」という雰囲気が出ていました。
一方、IT系ベンチャーで働いていた頃は、労働条件は良くありませんでしたが、新しいアイデアがどんどん採用されて、自分が会社を作っているという実感があったのです。
両者の経験を振り返ったとき、事業内容が魅力的なほうが、日々の仕事のモチベーションが高まることは間違いありません。
また、SEは技術力だけではなく、業務知識を覚える必要性が出てきます。そのとき、嫌々やっている仕事の知識を覚えるよりも、心から楽しんでいる仕事の知識を覚えるほうが、より知識が頭に定着しやすいでしょう。
会社員として生きる以上、人生の大半を仕事に費やすことになります。日々の仕事を少しでも楽しみたいなら、「魅力的な事業を展開している会社」が条件の良い会社です。
プロパー社員か?
プロパー社員かどうかも、SEにとって重要です。マネジメント職を得ようとしたとき、プロパー社員に役割が回ってくることが多いからです。
まずは、プロパー社員について詳しく解説します。
通常、IT企業の中には、多くの協力会社の社員が常駐しています。例えば、AというIT企業の中には、A社の社員以外にも、B社やC社の社員が一緒に働いているのです。
このとき、A社の社員のことを、本体の社員という意味で、「プロパー社員」と呼びます。
このプロパー社員は、本体の社員ということもあり、最終的には外部からきた協力会社の社員を取りまとめたり、自社の重要な仕事を任されたりします。
また、プロパー社員と協力会社の社員では、協力会社側に特別な技術力などがない限り、プロパー社員のほうが力関係が上です。
「協力会社」という言葉で濁したところで、実際には「下請け社員」という位置付けになります。能力では負けていないのに、立場の違いで給与が変わってしまうことも珍しい話ではありません。
このような理不尽な目にあいたくなければ、初めからプロパー社員を目指して転職するのが最善です。
「技術→マネジメント→役職」のようにステップアップしていきたいなら、「プロパー社員として働ける会社」が条件の良い会社です。
自社開発企業か?
自社でソフトウェアを開発している企業かどうかも、SEにとって重要です。世の中には、IT企業とは名ばかりの、SEをどこかの企業に「ひと月いくら」で売りつけて利益を出している企業が多々あります。
一方、自社でソフトウェアを開発している企業であれば、以下の2点のうちいずれかを満たしていることが多いです。
- 自社サービスを展開しており、人売りIT企業のビジネスモデルでは実現できないほど、企業が利益を出している
- ソフトウェアの受託会社であっても、外部から仕事を依頼してもらえるほど信頼されている
1.の場合、企業が利益を出しているが故に、SEの労働条件も優れていることがあります。特に、ITサービスは日進月歩の世界ですから、ライバル製品の脅威を理解している経営者ほど、自社の開発レベルを高めることに熱心です。
2.の場合でも、やはり「技術力の高さ」「品質」「長年の実績」などがあり、外部からソフトウェアの製造を受託している場合が多いです。このような会社では、技術レベルの高いSEが在籍しています。
給与・労働条件・同僚のレベルなどを重要視するなら、「自社開発企業」が条件の良い会社です。
社長がSE出身か?あるいは上層部にエンジニアがいるか?
社長がSE出身かどうかも重要です。自分がSEを経験して社長になったのにも関わらず、SEの労働条件をないがしろにすることは考え難いからです。
むしろ、SEを経験したからこそ、SEならではの苦労が理解できることがほとんどです。
例えば、僕が小規模の優良開発会社に在籍していた頃、その企業の社長は元SEということもあり、SEの労働条件に最大限配慮していました。
具体的には、「デスクが通常の企業より1.5倍程度広い」、「デュアルディスプレイ完備」、「長時間座っても疲れない椅子を用意する」など、SEが長期的に会社で働けるような設備投資を行っていたのです。
これらの設備投資は、費用対効果が高く、現場で働くSEにやる気を与えます。
一方、古い体質の企業では、「長机に椅子を並べただけ」、「隣のSEとの距離が数十cmで呼吸音まで聞こえる」など、SEを露骨に使い捨てにしていることもあります。
このような企業は、経営者がSE出身ではない、あるいは上層部にエンジニア畑出身の人間がいない企業で度々散見される例です。
このような企業で仕事を頑張っても、自分が上層部に出世できないどころか、若い頃と同じように働けなくなった40代以降で使い捨てされる危険性すらあります。
SEを大切にする会社で働きたいなら、「社長がSE出身の会社、あるいは上層部にエンジニア畑の人間がいる会社」を重点に置いて転職活動を行うと、条件の良い会社に巡り合える確率が高まるのです。
まとめ 万人にとって優れた転職先は存在しない
本記事冒頭でも説明しましたが、「条件の良い会社」は、会社があなたに与える業務と、あなたがやりたいことが一致しているときに、初めてあなたの目の前に現れます。
つまり、万人にとって優れた転職先は存在しないのです。
ここで転職先に迷っているなら、SE専門の転職エージェントを活用することで、会社が求める人材像の本音を探ることをおすすめします。通常の登録型転職サイトでは掲載されていないホットな情報まで探ることができます。
それから、会社の求めている人材像と自分の転職の目的が一致している企業を探すのです。
例えば、マネジメント職や一つの企業でのキャリアアップを目的にして「プロパー社員」になれる企業に転職した場合、やりたい仕事は諦めなければならない可能性があります。
プロパー社員は、会社の都合で動くを想定されていることも多く、開発部隊に行きたいのに運用部隊に配属されてしまうこともあります。
しかし、長年勤務すれば、マネジメントや経営までの道が続いているのも事実であり、それらの優先度が高いなら、やりたい仕事は我慢してプロパー社員として生きるべきです。
一方、どうしても身につけたい技術があるなら、その技術を使っているプロジェクトに参画するのが一番です。一度でも業務で経験すれば、転職市場でスキルをアピールして業界を渡り歩くことができます。
プロパー社員としての道を捨てる代わりに、フリーランスエンジニアや経営者の道が開かれるのです。
このように、自分の目的によって正しい選択肢が異なるのがSE転職です。本記事で解説した項目の中で、自分にとって重要なポイントを押さえておくことで、転職先では満足して働けます。