システムエンジニア(SE)が転職するとき、資格の有無を気にする人は多いです。周りのSEが資格を取得している中、自分だけ資格を取得していないと、面接で見劣りするかもしれないと感じるからです。
一方、資格を取得するよりスキルを身につけたほうが良いという人もいます。
「資格は必要!」「資格は不要!」の意見が対立しているので、これから資格を取得しようと考える人も、「無駄な努力はしたくない」と二の足を踏んでしまいます。
僕も転職を経験する前は、「いるのかいらないのかどっちなんだろう…」と心の中で愚痴っていました。
しかし、どのような状況で資格が役に立つかを具体的に掘り下げることで、今のあなたにとって資格が必要かどうか、一目でわかるようになります。
そこでこのページでは、「資格はどのような状況で役に立つか? 」「資格がないときに実力を証明するための転職方法」を解説します。
Contents
業務独占資格ではない資格でも転職で役に立つ理由
IT業界の中では、資格が必要だという人と資格は不要だと言い切る人にわかれます。これは、IT系資格の多くが業務独占資格ではないためです。
業務独占資格とは、医者・弁護士・会計士などのように、資格を取得した者のみが業務を行える資格のことです。
IT業界の資格は、特定の分野の知識を有していることを証明するという役割を果たしている側面が大きいです。そのため、資格を取ることに時間を使うのであれば、スキルを身につけたほうが良いという人もいます。
しかし、僕の経験談からいうと、資格を取得しておいて良かったと思えることが何度もありました。
そこで、ここからはIT系資格を取得することによって得られるメリットを、僕の経験談とあわせて解説します。
エンジニア同士で共通の知識があれば、業務がスムーズに進む
同じ資格を取得しているもの同士では、「Aという資格を持っているということは、この程度の知識は伝わるだろうな」という共通の知識を持っています。
そして、共通の知識があることによって、仕事がスムーズに進むことが頻繁にあります。
例えば、僕は以前、大規模データセンターで運用SEの仕事に従事していた経験があります。この職場では、新たにセットアップするコンピュータにIPアドレス(ネットワーク上の機器を識別するための番号)を手動で割り当てる業務が発生していました。
リーダーの手がいっぱいだったので、当初は僕より一カ月先に入った新人に業務が回りました。
しかし、その新人はネットワークの知識に疎く、リーダーは知識の解説からしなければならなかったのです。
そこで、応用情報技術者を取得している僕に業務が回ってきました。振り分けても大丈夫なIPアドレスの算出方法などは資格の試験範囲ですので、「知識を知っているか?」という質問ではなく、「出来そうか?」という質問になります。
その質問に対して「業務としてやるのは初めてですが、〇〇ということでいいんですよね?」と返し、「その通り!」となったので、リーダーにとって煩わしい教育が発生せずに業務を引き継ぐことができました。
初めての業務でも、すでにある知識から推測して「どうやればいいのか?」というステップを飛び越えて、「〇〇というやり方であっているか?」というやり取りができるのは、資格によって共通の知識を身につけているからだと考えられます。
このように、スムーズな業務の引継ぎができると、リーダーからの信頼を得るのも早くなるでしょう。
ポテンシャルの証明になる
資格試験がポテンシャルの証明につながることがあります。難しい知識を問われる試験に合格したということは、それを理解できるだけの素質があると評価されるからです。
例えば、僕は今までに、「ベンチャー企業の中核業務・運用系SE・開発系SE」と職種を大きく変えた転職を行ってきました。コンピュータの専門学校を中退してベンチャー企業に就職しているので、新卒で入社した企業は一つもありません。
このような状況で未経験ながら多くの仕事に採用されてきたのは、以下のような応用情報技術者を取得していたという事実が大きかったです。
仮に、未経験職種への転身に説得力のある理由があっても、実際に業務をこなせるレベルに成長するかどうかは未知数です。特に、学歴がない人間の場合、わかりやすい学習歴の指標もないのです。
そこで資格試験に合格していれば、エンジニアとしての素質の判断材料になります。すると、資格がない人材と比較して、将来性に期待して採用されるチャンスが増えます。
また、SEを派遣する会社の営業担当者が、さまざまな企業に営業をかけるときも、資格を持っているほうが営業をかけやすいのです。現場で使用する機器に関する民間資格を持っていれば、知識に対する積極性がクライアントに買われるからです。
このように、スキルが身についていないときのポテンシャルの証明として、資格は効力を発揮します。
資格を取った行動力が評価される
資格取得に至るまでの行動力が評価されることもあります。ほとんどのSEは日々の業務に追われているので、業務時間外で自分の能力を高めるようなことをやっていないからです。
例えば、開発系のSEからプロジェクトマネージャーの仕事にステップアップしたいとします。
現状の会社にそのようなキャリアパスが存在しなかった場合、先に情報処理技術者試験のPMの試験に合格しておくのです。
すると、ステップアップのための転職時にも、面接官から「自分のキャリアを形成するために行動を起こしている」と判断されます。
今回のマネージャーへの転職例でいうと、普通はマネージャー経験が重要視されます。
しかし、最初は誰でもマネージャー未経験です。このような状況で、キャリアを積むために自分にできる行動を開始する姿勢は評価されるのです。
資格を所有していると、運でステップアップすることもある!
僕がデータセンターの運用SEとして働いていた当初、マシンオペレータとして働いていました。
しかし、ネットワーク管理部門に一人欠員が発生し、誰かがそこの仕事を担当しなければならない状況になったのです。
ネットワーク管理部門のリーダーは情報処理技術者試験のネットワークスペシャリスト資格を取得しており、ネットワークの知識を理解できるエンジニアを求めていました。そこで、応用情報技術者の僕が配属されることが決まったのです。
このように、資格を持っていただけで、楽々ステップアップする機会もあるのです。
目的が明確でない資格取得の場合、マイナス評価を受けることもありうる
資格を取得する際の注意点がひとつあります。それは、資格取得の理由を明確にすることです。
この理由部分が明確でないと、どのような難関資格に合格していたとしても、一貫性のない資格マニアだと判断されます。
例えば、情報処理技術者試験のデータベーススペシャリスト・ネットワークスペシャリスト・ITストラテジストなどの難関資格に合格していたとします。
しかし、上記の資格は学習範囲に対応する職種が違うため、一貫性がありません。
特に応募する仕事のスキルが身についていない場合、「余計な資格を取得する時間でスキルを磨くことはできなかったのか?」と面接官から疑問に思われてしまいます。
さまざまな資格を取得した結果、特定の分野に進みたいと考えたのであれば、あえて関係のない資格は履歴書に書かないという手段もあります。
- レベルの低い資格は最初から履歴書に記載しない
- 難関資格でも、場合によっては記載しない
この2つに気をつけておけば、資格によって面接官にマイナスの印象を与える心配はありません。
今すぐ転職したいが資格がない場合
いくら資格が転職に有効だからといって、今すぐ転職したいのに資格の勉強を始めるのは間違いです。年齢や景気などが転職のタイミングを左右することのほうが多いため、転職を検討しているなら今すぐ転職サイト・転職エージェントを活用して転職活動を開始してください。
実際、転職市場は年齢が若いほど価値が高く、35歳を超えると徐々に転職が難しくなります。
資格は目的ではなく、実力を証明するための手段です。何らかの形で転職先でも役に立つ人材であることを証明できれば、資格は必須ではありません。
資格がなくても実力を証明できる方法はあります。ここからは、資格がないときの対処法を解説します。
勉強会や交流会に参加する
プログラミング言語や技術系コミュニティの勉強会や交流会に参加すると、転職面接で有利になります。普段から意欲的なコミュニティに自主的に参加するSEは、技術に対して積極的だと判断されるからです。
こういったコミュニティでは、他のエンジニアのソースコードに触れる機会が多いです。さらに、自分が現在どのようなレベルなのかを客観的に見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
企業の面接で勉強会に参加していることがメリットになるだけではありません。この勉強会に来ているエンジニアとの交流がきっかけで、スカウトされることもあります。
通常の採用面接だけが転職の道だと考えずに、人脈を生かして転職することを心がけてください。
学校の先生と人脈をつくって転職した友人の話
僕がかつて通っていたコンピュータの専門学校には、ゲーム業界で働いている現役の人が講師として授業をしていました。
人気のある講師だったので、多くの学生が、飲み会の際に講師に携帯電話のアドレスを聞いていました。
しかし、講師は学生に対して一線を引いていたので、ほぼ断られている状態でした。
このような状況下で、その中の一人だけは、率先して飲み会の幹事をして上手に講師の機嫌を取ることで、卒業後もつながりを継続していました。
彼は応用情報技術者を取得していた僕から見ても優秀なエンジニアでした。ですが、新卒時の当時は大不況だったということもあり、希望する企業には就職できませんでした。
しかし、つい最近8年ぶりに出会ってみたら、何と上記の講師が立ち上げた会社に転職していたのです。プライベートな時間でその講師に自分の実力を証明してきたので、会社の立ち上げ時に声がかかったとのことでした。
「転職 = 転職サイトに登録」と考えていた僕には晴天の霹靂でした。人脈で転職する人も世の中には大勢いるのです。
自分のプログラムをインターネット上に公開する
自分が学んだプログラミング言語を用いて、インターネット上にソースコードを公開すると、最も効率よく自分のスキルを証明できます。
面接の際は、今までどのようなプロジェクトに参画し、どのような役割を担ってきたかを面接官に問われます。数回の面接のどこかで技術担当者が面接に出てくることがほとんどなので、そこでおおよその自分のスキルは測られると考えてください。
しかし、業務とは別に個人的に学習したスキルなどをアピールしても、どのようなレベルに達しているのか伝わりきらないこともあります。
そこで、GitHubのようなインターネット上にソースコードを公開するサービスを利用して、自分のスキルを証明するのです。
技術がある程度わかる人に見せれば、その人の実力は必ず伝わります。すると、面接の受け答えで手ごたえがなくても、後からソースコードを確認して評価が上がることもあるのです。
仮にあなたが現在転職を考えていないとしても、インターネット上に自分のソースコードを公開するのは有効です。普段からアウトプットを意識することによってスキルが磨かれますし、転職の際に実力を証明するポートフォリオになるからです。
履歴書にURLを記載し、「僕の詳しいスキルは、ここを見て頂ければわかります」とすれば、スキルを重視する企業であれば確認してくれます。また、インターネットにソースコードを公開することに抵抗があれば、メールに添付するような形で作品を提示する方法もあるでしょう。
資格がない場合は、自分の生み出したアウトプットが実力の証明になります。転職の際に慌てなくて済むように、普段からスキルのアウトプットを心がけてください。
まとめ:資格が必要か否かは希望の転職先からの逆算で決める
繰り返しになりますが、資格取得は必須ではありません。
しかし、資格勉強している人を横目に遊んでばかりいる人が評価されるわけではありません。資格を取得するつもりがないなら、その時間を活用して別のスキルを磨くことが、転職活動の成功につながります。
ここで、転職を成功させるオススメの方法があります。それは、転職エージェントに相談して、希望する転職先ではどのようなスキルが求められているかを確認することです。
例えば、以下のような項目は必ず確認してください。
- 資格は必要か?
- 学歴は必要か?
- 必須経験は何か?
- 年齢は何歳までOKか?
- 忙しい時期の残業時間はどれくらいか?
- 転職先で使用されるプログラミング言語・使用ソフトは何か?
また、企業側は多くのスキルを応募者に求めますが、すべてを満たしているケースはほとんどありません。そこで、転職エージェントを通じて企業の内情を聞き出し、さらに企業が強く求めている人物像を割り出してください。
これらを実施した後、資格・スキル・年齢など企業が求めている要件から逆算して学習計画を立てるのです。そこで自分に足りないものが資格だった場合、半年~数年計画で資格を取得すれば、無駄な資格を取得する心配がなくなるでしょう。
場合によっては、資格が必要ないこともあり、そのときは転職エージェントを活用してすぐに転職活動を開始してください。
転職活動の結果、良い企業に巡り合えなくても、今の自分を客観視して数年後に向かって現在の仕事に集中できるようになります。