システムエンジニア(SE)が退職するとき、何かしらの理由があります。何も不満がなければ、退職する理由もないからです。
ここで、お世話になった企業やこれから面接する企業には、取り繕った退職理由を話します。
「親の介護で」「地元に帰ることを検討していて」など、仕方がない理由を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか？
しかし、本音では別のことを考えているのが社会人というものです。本音を語ると、もっと生々しい退職理由が誰しもあります。
そこでこのページでは、「SEが口に出さない本音の退職理由」について解説します。
Contents
SEが口に出さない本音の退職理由
SEは転職が多い世界です。スキルに汎用性があり、一つの現場での経験が、別の現場に活かしやすいからです。
これから解説するSEの転職理由は、あなたの身近な人が退職する理由と同等だと考えていただいて構いません。
つまり、あなたの人生が以下の5点に当てはまっているなら、あなたも転職した方が得策かも知れないのです。
- 経営者の思想(社風)が合わない
- 上司が嫌い
- スキルアップできない仕事内容
- 自分の能力が不足している
- 相場より給料が低い
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.経営者の思想(社風)が合わない
経営者の思想(社風)が合わないのは、退職を決意する大きな要因といえます。SEたちが使われている立場であることは事実ですが、良くない経営者のために働くのは馬鹿馬鹿しいからです。
例えば、体育会系のマネジメントで怒声を発する上司がいたとします。このとき、社内全体に怒声を上げる雰囲気があるなら、上司ではなく経営者がそれを推奨していることは間違いありません。
僕も、あまりにも毎日怒声が響く会社に運悪く入社してしまい、円形脱毛症になってしまったことがあります。
ほかにも、社員の仕事を徹底的に平準化して、非正規社員でもこなせるレベルに落としこもうとしてくる経営者もいました。それをやっても、自分の年収が低くことが目に見えていたため、現場の誰もやる気は起こらなかったのです。
このように、いくら給料をくれているといっても、自分のことを考えてくれない会社のために働きたいとは思いません。
あなたを雇っている経営者の思想(社風)が自分に合わないのであれば、転職して素晴らしい経営者の手助けをしたほうが100倍有意義でしょう。
2.上司が嫌い
上司が嫌いという人間関係の悩みも、SEの退職理由になりうるものです。人の悩みの大半は人間関係からくるといわれており、いくら仕事内容が良くても、一緒に取り組む上司が嫌いなら仕事を楽しめません。
例えば、「自分と上司の成長意欲が違いすぎる」というのは、意欲の高いSEに起こりがちな悲劇です。
どうせ同じ時間働くのだから多くのスキルを習得したいと考える自分と、新しいことをやりたくない上司がいれば、必ずぶつかります。このとき、新しいことをしたくない人が上司だったら、大抵現状は変わりません。
上司の立場から考えると、数年間穏便にやり過ごすことで別部署に異動になったり退職したりするなど、逃げ切れる算段がついている可能性があります。
反対に、上司が下手に仕事ができる人で、こちらのミスに嫌味や怒声で反応するような場合も、上司がストレスになるのです。レベルの高い職場であれば、ミスが起きないような仕組みづくりに尽力するものですが、プレイヤー側の働き方が抜けていない上司の場合、「ミス = 注意散漫」と断定する傾向があります。
上記のようなケースにあなたが当てはまるなら、おそらく現在のあなたはマネージャー側ではなく一エンジニアとして働いているはずです。
ここで、逃げるように転職しても、スキルがなければ同じような会社にしか転職できません。そこで、転職市場で通用するスキルを身につけた後、ホワイト企業に転職して力を発揮するのが正解です。
ただし、複数の会社を経験していないなら、自分のスキルがどの程度のものかを把握できないこともあります。その場合は転職エージェントに相談して、自分の市場価値を測るのも大切です。
3.スキルアップできない仕事内容
スキルアップできない仕事内容についている場合も、退職理由になります。20代の頃は低スキルの仕事でよくても、30代以降になると給与に差がつき始めるからです。
例えば、僕が夜勤の運用SEとして働いていた現場では、基礎的なITリテラシーさえあれば誰でもこなせる仕事でした。
しかし、夜勤ということで給料が上乗せされているだけで、将来的にもスキルや給料の上昇がないことは分かりきっていたのです。
このような状況下で、将来のことを考えてスキルアップできるか否かであなたの将来が決まります。
僕の例でいえば、夜勤の運用SEの会社では、待機時間に何をしていても文句を言われない緩い会社であることが幸いでした。同僚がスマホゲームに興じる中、自分だけはIT系ライターになるための文章力を磨けたのです。
スマホの電子書籍で文章術の本を読み漁った結果、当サイトのようなSEのための転職情報サイトを構築できるまでに成長したのです。
ITエンジニアでありながらも、「文章が書けてWebマーケティングを理解している」という特別な価値を生み出すことに成功できました。
これは極端な例ですが、SEとして生きていきたいと考えているあなたは、スキルアップができない会社で働いているとき、以下の選択肢があると考えられます。
- スキルアップは期待できないが仕事量がそこまで多くないなら、会社内で自主的にスキルアップに取り組んだ上で転職
- スキルアップが期待できない上に余裕がないほど仕事量が多いなら、今すぐスキルアップできる会社に転職
1.のような状況であれば、自分で仕事を作り出すことでスキルアップは可能です。例えば、現在の業務をExcelのマクロで自動化するなど、会社にとって利益になる仕事を上司に提案すれば、無下にする会社は多くありません。
そこでプログラミングの基礎を学べば、あなたを受け入れたい現場は増えていきます。
一方、スキルアップもできずに仕事量も多いなら、今すぐ転職を検討するべきです。どうせ忙しいのなら、スキルが身につく会社で忙しく過ごさないと、30～40代以降で市場価値のない人間にされます。
あなたの現在の状況がどちらであるかを見極めた上で、自分にとって正しい行動を選択してください。
4.自分の能力が不足している
自分の能力が不足しているときも、退職する理由になってしまいます。毎日会社で働いていると、自分ができる人間なのかどうかは見えてくるものです。
そこで、自分ができない側に当てはまってしまった場合、罪悪感から退職を検討するようになります。
たしかに、仕事ができずに今の会社に居場所がないと感じてしまうことはあるかもしれません。
しかし、一つだけ僕の助言を聞いて頂けないでしょうか？
結論からいうと、「会社や仕事内容が自分に合っておらず、仕事ができないように見えているだけ」の可能性もあるのです。
例えば、僕は学生時代から20代中盤ぐらいまでは、バリバリとプログラミングができる人間になりたいと考えていました。少数精鋭の開発会社に入社したこともあります。
しかし、そこで自分のプログラミング能力が会社の平均より低いことに絶望して、一時期はIT業界から去ることを検討したほどです。
失意のどん底にいた僕ですが、運用SEの現場に転職することで、難なく平均以上のパフォーマンスを発揮することに成功しました。つまり、IT業界が向いていないわけではなく、開発者としての適性がないだけだったのです。
特に、新卒で入社して一社しか経験していない人間の場合、たった一社での失敗体験から「自分は仕事ができない」と思い込んでいる場合もあります。そこで早とちりしてIT業界から離れず、適性のある職種に転換する意識を持ってください。
現在の仕事が向いていないと感じているなら、以下の記事も参考にしてください。
5.相場より給料が低い
自分が受け取っている給料が相場より低いときも、退職したいと考えるようになります。同じ現場で同じ仕事をしているのに、会社の違いで給料が異なることがあるからです。
そもそも、SEが働く現場は、SIerが仕切っていることが多々あります。SIerとは、システムインテグレータの略称であり、顧客企業からITシステムの開発から運用までを一括受注して回すビジネスモデルです。
このSIerが仕切るSI業界では、建築業界と同じようなピラミッド構造になっています。ITゼネコンと呼ばれることもあるぐらいです。
SI業界の構造を図にすると、以下のようになります。
SEが働くIT企業の多くが、〇次請けとして特定の企業にエンジニアを派遣する、事実上のエンジニア派遣会社として運営されているのです。
ここで、ピラミッドの下側にしか派遣できない小規模企業に入社すると、給料が悪くマネジメントへのステップアップも望めない環境で働かざるをえません。
さらに、同じ二次請け企業であっても、企業が違えばピンハネ率が異なります。顧客先企業から受け取ったお金のうち、いくらがSEの元に渡るかは、勤めている企業次第なのです。
別企業所属の同じ現場で働くSE同士の場合、仲良くなった後でお互いの給料を教え合うこともあります。ここで、自分が不当に搾取されていると気がついてしまい、転職を検討するSEは後を絶ちません。
また、SI業界以外でも、自分の給料が相場より低いことがあり得るのです。
自分の給料が適正かどうかは、インターネットを活用することで大体は把握できます。例えば、転職情報を掲載しているWebサービスであれば、企業の平均年収なども掲載されているものです。
ただし、「自分のスキル感では、どれほどの給料を受け取れるのか？」を判断するのは難しいといえます。特に、複数の現場を経験していなければ、スキルの安売りをしている可能性があるのです。
この場合、転職エージェントに登録して、自分の能力を客観視してください。転職エージェントは、「このエンジニアは、これくらいの給料で仕事ができる」ということを判断するプロです。
専門家の意見を聞いた後、仮に相場通りの給料で働いていても、「給料アップのために習得すべきスキルは何か？」という改善点が必ず見つかります。
こうして、戦略的に自己成長すれば、スキルに適した給料を必ず受け取れるでしょう。
転職エージェントについて詳しく知りたいなら、以下の記事も参考にしてください。
ブラック企業からホワイト企業に転職するのがSEの正義
SEが会社を退職する理由はさまざまです。会社の給料が低すぎることから、経営者が嫌な奴すぎることまで、多くの理由で退職を決意します。
ただし、SEが仕事を退職する理由を一言で説明すると、「総合的に見てブラック環境すぎる」という一言に尽きるのではないでしょうか？
もちろん、自分にとって理想の会社など存在しません。
しかし、トータルで考えてホワイトなら、転職に二の足を踏むはずです。つまり、転職を実施したSEは「実際に転職に踏み切るほど今の環境が良くない」というメッセージを経営者に向けて発信しています。
もし、あなたがスキルを身につけたSEなら、自分を不当な環境で働かせる会社に見切りをつけて、ホワイト企業に転職してください。これは、あなただけのために言っているのではありません。
あなたが不当な条件で働き続けると、IT業界で働く多くのSEも不当な条件で働かざるを得ないのです。
- あんなに凄い人でもあの給料なのだから、君の給料がこれでも仕方がないだろう
このようなセリフをブラック企業の経営者が吐いたとき、普通のSEに反論のしようがあるでしょうか？
一人のエンジニアの立場で、会社の経営方針を変えることは難しいです。「変わりはいくらでもいる」と反論する経営者もいるでしょう。
しかし、代わりのいないSEたちが、少しでも条件の良い職場に転職する文化ができれば、ブラック企業も条件を上げざるを得ません。
つまり、スキルのあるあなたが転職することで、あなたの人生が充実するだけでなく、IT業界全体を健全にできるのです。
