IT業界では、多くのシステムエンジニア(SE)が転職を経験しています。現在の会社で頑張り続けるより転職したほうが、効率よくステップアップできて、同時に昇給も実現するからです。
しかし、SEの転職体験談を聞ける機会は多くありません。
現在の会社で、転職していく人に根掘り葉掘り事情を聞くと、自分まで転職を検討しているように思われてしまいます。
転職してきたSEに話を聞く場合も、円滑に仕事を進めるために前職の経験を尋ねることがほとんどなので、転職市場やオススメエージェントを聞く機会など、滅多にないはずです。
これでは、本音では転職したいとあなたが感じていても、転職を肌感覚で感じることができません。
でもご安心ください。本日は、「現役SEである管理人の転職体験談」を惜しげもなく公開します。
僕の転職体験談から、あなたにとって、「何か一つでも得るもの」があれば幸いです。
Contents
管理人の就職・転職体験談
僕のSE人生は、転職と付き合う人生だったといっても過言ではないほど、転職によってキャリアを築いています。改めて、転職が当たり前のIT業界で良かったと思えるほどです。
複数回転職をした感想を結論からいうと、「転職したことによって多くの学びがあった」と断言できます。
世の中には、「会社なんてどこも同じだろ?」という人もいます。
しかし、経験に紐付かない意見は、どこか軽薄に感じるのも事実です。
そこで、まずは僕が複数回転職した実際の体験談をお話します。ここから、「SEとしての葛藤」や、「世の中には様々な企業があること」を学んでください。
IT系専門学校を中退して、ベンチャーに飛び込む。少しだけ開発も経験
僕はかつて、IT系の専門学校に通っていました。そこで、プログラムを学びつつ、「システムアドミニストレータ」「基本情報技術者」「ソフトウェア開発技術者応用情報技術者」の3つの資格に一発合格し、ITスキルを高めていました。
しかし、当時の僕は、今以上に尖っています。難関資格に合格した僕は、「もう学校で学ぶことなど、独学で対応できる」と断定し、中退して働くことを決めたのです。
教師からは「大企業に就職できるチャンスを捨ててしまう」という理由で引き止められました。
しかし、「大企業の中でステップアップしていっても、未来が見えてしまう」という理由で構わず中退し、その後ベンチャー企業の就職を決めました。
就職したベンチャー企業はネット通販の会社だったのですが、変化が好きな僕にとってはピッタリなほど、多くの仕事を任されました。
- 中古本やDVDの出品業務
- 買付け業務
- 顧客からのクレーム対応業務
- PHPで制作されたシステムのメンテナンス
- 社員の採用業務
- 社内ITインフラの整備
アパートの一室で運営しているような小規模な組織だったこともあり、多くの業務が自分に回ってきたのです。
何も制度化されていない状態から、会社組織が出来上がっていく所を経験できたため、キャリアの最初で貴重な経験を積むことができました。
また、ビジネスの単位が小さかったので、将来的に独立を検討する僕が、「案外、起業して飯を喰っていくだけなら難しくないのかもな」と感じた瞬間でした。
しかし、その会社では技術力を身につけることはできませんでした。
また、あまりにも仕事の進め方が我流な気がしていたので、一度大手企業の中に入ろうと思い立ち、転職活動に踏み切ったのです。
大手の技術者になろうと思い立ち、未経験採用の運用SEになる
転職活動で入社した企業は、大手企業の協力会社の運用SEでした。
この企業は、前職とは正反対といっても過言ではないほど、セキュリティに厳しく、仕事の進め方もガチガチのマニュアル通りだったのです。
ベンチャー企業での緩いノリに慣れていた僕には、貴重な学びがありました。取引先から信頼を得るために、企業がどのようなセキュリティ施策を実施しなければならないかを、理解することができたのです。
また、この職場では、チームのリーダーに卓越したネットワークエンジニアがいました。その人に目をかけてもらったこともあり、運用SEとしてのキャリアだけでなく、資格で学んだ知識を実践で使えるスキルに落とし込むことができました。
率直にいうと、この会社の仕事は大企業の下請けのため、給与は安かったです。
しかし、「生活の安定化」と「スキルの獲得」のために、しばらくは続けました。
ここで身につけた運用SEの知識やスキル、業界事情を知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
このときは、「学校を中退していなかったら、下請け側ではなく、元請け側に回っていた可能性があるなぁ」と、少しだけ弱気になりながらも、「組織に依存せずに生きていく」という信念を掲げて、仕事に取り組んでいました。
そこで、「マネージャーにステップアップしないと、これ以上の業務は経験できない」というところまで自分を高めて、再度転職しました。
少数精鋭の開発会社に転職し挫折
今までの経験を活かしてネットワークエンジニアに転職することはできましたが、「より組織に依存しないスキル」を身につけるために、一か八か開発系SEに転職しました。
基本的に、僕の就職活動は「自分が受かりそうな会社を受ける」ことを中心としているため、数社を受けたら1つは内定が出ます。
転職で内定が出ずに困っている人は、以下の記事を参考にしてください。
また、このときは未経験職種だったので、ポテンシャルを上手く証明する必要があります。
資格をポテンシャルの証明に使いたい人は、以下の記事を参考にしてください。
そこで得た、小規模な自社開発会社の内定ですが、早々に再転職を検討しなければならない状況になります。
当時、会社には2つの開発ラインが存在しました。特定を防ぐため、仮に、「Aという一般的な開発言語」と「Bという特殊な開発言語」の2つの開発ラインがあったと思ってください。
面接のときは、Aの開発ラインに参画する予定だったのですが、会社の都合でBという開発ラインに参画することになってしまったのです。
また、一度参画するとしばらくは移動がないというのが、小規模開発会社ゆえの問題点です。
これでは、組織に依存しないスキルを身につけることは困難なので、一年勤める前に退職を決意しました。
ネットワークエンジニアに転職したものの失敗
前職の開発会社を退職後、僕は無職になっていました。会社の本格的な教育が始まる前に、退職したほうが良いと感じていたからです。
しかし、無職になったことにより、僕の中に焦りの感情が生まれました。
そこで、転職エージェントが強引にオススメするネットワークエンジニアの職種に、応募したのです。
実は、この会社はネットでは悪評の立っている会社でした。面接の直前に気が付き、転職エージェントに面接の辞退を伝えたのですが、「ネットの評判などあてにならない」と説得されてしまい、結果的に入社してしまうのです。
この後の経緯もお伝えしたいものですが、この失敗談の詳細は記事にしているので、よければ参考にしてください。
転職に焦りがあった・良質な転職エージェントの見分け方を知らなかった・ブラック企業の見分け方を知らなかった、など複数の要因が絡んだ、不幸な転職になってしまったのです。
再度運用SEになり、不安のあったスキルの解消
そこで、転職についての正しい知識を学び、経験からある程度のスキルが身についていた、「運用SE」の仕事に再転職しました。
前職の運用SEはWindows系のサーバーを扱っていたこともあり、次はLinux系のサーバーを扱う企業に転職しました。
ここで、前職の経験を活かしつつ、不足していたスキルを身につけることで、運用SEとしてのキャリアを確立させたのです。
このようにして、僕の20代はバタバタと過ぎ去っていきました。
途中で何度も挫折しそうになりましたが、何とか運用SEという30代の方向性を決めるキャリアも手に入れることができたので、及第点は取れたということができるでしょう。
転職して良かったこと・わかったこと
20代で何度も転職に踏み切った僕ですが、「転職を経験して良かった」と心から感じています。実際に、転職を経験することによってしか、わからないこともあるのです。
具体的には、以下の3つの考え方を知ることができました。
- 企業を客観視できるようになった
- 自分の市場価値を意識するようになった
- 自分の適性を理解することができた
順を追って解説させて頂きます。
1.企業を客観視できるようになった
複数の企業で働くことにより、企業ごとに特色があることを身を持って実感しました。これは、新入社員の時代から、ずっと同じ職場に勤めている人にはわかりづらいことです。
例えば、同じ運用系SEの仕事でも、おやつを食べながら仕事ができる職場もあれば、15分単位でやるべき仕事が決められている職場もあります。
他にも、僕が経験したブラック企業では、「上司や先輩が部下に多くの仕事を押し付けて、自分は居眠りしている」というマネジメントを経験しました。
そのブラック企業では、適切な指示も与えないまま、「指示どおりに部下が動かない!」と怒声をあげられる経験もしました。
このような企業に限って、「ここでうまくいかないなら、どこに行ってもうまくいかない」というセリフを吐かれるものです。
しかし、他のレベルの高い大企業のマネジメントを経験していたため、そのような言葉に惑わされずに、さっさと次の職場を見つける努力を始めました。
このように、たとえ相性の悪い企業に入社しても、そこから適切な行動が取れるのは、転職によって多くの企業を見てきたからです。同じ企業に新卒として入社していたら、今ごろSE自体を辞めていた可能性もあるでしょう。
今回の転職は失敗だったと感じても、次の転職につなげることによって、失敗が貴重な経験に置き換わるのです。
複数回転職をして、最終的に相性の良い企業とめぐりあいたいと考えているからこそ、成長しながら企業を客観視する力も身につけることができました。
2.自分の市場価値を意識できるようになった
SEの世界では、複数回の転職によってキャリアを築くのが一般的です。
ただ、僕の認識としては、「全く転職をしない人」と「複数回転職をする人」に二分されていると感じています。
その中で、一つの企業に勤め続けることにもメリットはあります。同じ会社に勤めて10年も経つと、会社のことならなんでも知っている状態になり、徐々に口うるさく言ってくる人も減ってきます。
また、後輩や部下ができやすく、自分にとって快適な環境ができることもあります。
ただ、一つの会社に勤め続けて中高年になり、そのときに会社の調子が悪くなったとします。社内の有能な人が脱出していく中、自分だけは会社にしがみつくしかないかもしれないのです。
つまり、一つの会社に留まると、「自分のスキルではなく、会社の調子に依存する」というリスクを抱えていることになります。
一方、転職を前提としてキャリアを築いている人は、「自分の市場価値を常に意識できるようになる」というメリットがあります。
- 給与を貰いすぎているか? あるいは少なすぎないか?
- これからの転職市場では、○○のスキルが求められるのではないか?
- 社内では経験できないポストが、社外では不足しているのではないか?
このようなことを常に意識できるようになります。僕も、今では会社のことを、「社会保険などの手続きを代行してくれる主な取引先」程度に思えるようになりました。
人によっては薄情だと思われるかもしれません。
しかし、現在は定年まで社員の雇用を守り抜く会社は減る一方です。
今後もこの流れは加速することが予想できるため、これからの時代は、「常に自分の市場価値を高めて、いつでも会社を変更できる状態」に自分を持っていくことが重要になります。
3.自分の適性を理解することができた
複数の会社を渡り歩くことによって、自分の適性を理解できるようになったのも、転職して良かったことの一つです。最初の企業に勤めていたら、今ごろ井の中の蛙になっていたでしょう。
例えば、僕が最初に勤務したベンチャー企業では、ITに詳しい人はあまりいませんでした。ここでは、僕が社内のITインフラを整える役割を担っていたので、なんでもできる気になっていました。
しかし、次の運用SEの大規模データセンターでは、到底自分のスキルでは把握できないネットワーク網が構築されていました。
このような現場で、尊敬できるネットワーク管理者に指導を受けているうちに、ITスキルよりも「非エンジニアに対して、わかりやすく物事を伝えるスキル」に適性があることが理解できました。
これは、転職したからこそ得られた知見です。
一つの職場に留まってしまうと、どうしても会社に染まったモノの見え方になります。転職によって、あなたの信じていた世界が大きく変わる可能性を秘めているのです。
まとめ:転職で失敗しないために転職計画を立てること
僕の転職活動は、成功と失敗が入り乱れる「変化の激しい」転職でした。人知れず涙を流すこともありましたが、最終的には納得のいく形で仕事を得ることができているので、転職して良かったと心から感じています。
しかし、今にして思えば、SE転職に関しての正しい知識とスキルがあれば、もう少し要領良く転職できていたことは間違いありません。
例えば、僕の転職活動であれば、以下のようなツッコミを入れることができます。
- 我慢して学校を卒業していれば、ランクの高い企業に就職できていたのでは?
- 開発会社から転職するとき、新しい開発会社に転職することは考えなかったのか?
誰にも相談せずに行動した結果、客観性の欠けた行動を数多く取ってしまっているのです。
あなたの転職が、僕のようにバタバタとしないために、転職の計画やSE転職におけるキャリア構築の考え方は、必ず知っておいてください。
先人の失敗を糧にして、人類社会は進歩しています。あなたも、僕の転職経験を参考にして、要領良く転職してください。
転職失敗の可能性を減らすことにより、毎回転職先で最高の経験を積めば、ライバルより広い世界がみえるSEになれるのです。