システムエンジニア(SE)として働いていると、この業界から脱出したいと思わされることがあります。例えば、SI業界特有のピラミッド構造のせいで、ろくな給料がもらえずにモチベーションが湧かないことがあるものです。
ほかにも、激務過ぎてIT業界から脱出したい・仕事が向いていないなど、さまざまな理由で脱出を試みる人がいるでしょう。
ここで、SEを脱出した後のキャリアを考えておかないと、さらなるブラック企業勤めや非正規社員生活が待っているかもしれません。
そこでこのページでは、「SEを脱出したい人にある次の選択肢」について解説します。
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ITを活用しないのは勿体ない
SE脱出の前に、一つ伝えておきたいことがあります。それは、「ITを活用しない転職は勿体ない」ということです。
大きな理由として、ある業界で経験を積むと、その業界以外の転職が難しくなるという事情があります。
例えば、「飲食業での経験は、飲食業以外で活かしづらい」といった話は、どこの業界でもあることです。IT業界も、例外ではなく、SEが転職しやすい業界は必然的にIT業界になります。
また、ITだけは全ての産業に入り込んでいるため、使い所がたくさんあるのも、ITを活用した方が良い理由です。
具体的には、業務系SEが無理でも、以下のようにITスキルを活かす道はたくさんあります。
- 社内SE
- 運用SE
- Webエンジニア
- フリーランスエンジニア
- ヘルプデスク
- 教育系
- IT営業
- ITコンサルタント
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.社内SE
社内SEは、SEを脱出したいと考えたときに選択肢に上がる職種の一つです。SIerの開発者のように、毎日バリバリ開発するのではなく、企業の情報システム部で発生する様々な業務を担当します。
例えば、社内の新システムに関して企画立案したり、すでに運用しているシステムを改善したりするのも、社内SEの一般的な業務です。
また、ある程度大きな企業ならSIerが入っていることが多く、彼らに仕事を依頼するなどの調整業務も行います。
IT業務の中で、開発側から調整側に回りたいなら、社内SEがおすすめです。
以下のような求人が、社内SEの典型的な求人です。
社内SEに関して詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
2.運用SE
運用SEの仕事も、SE(開発側)から脱出したいと考えたときに選択肢に上がる職種の一つです。社内SEと仕事内容が共通することも多く、社内SEよりも求人数が多いため、仕事を得られる確率も高まります。
例えば、サーバーでアラートが発生したときに対応する運用オペレーターの仕事もあれば、その企業でしか使われていない特殊なシステムの担当者となって、トラブル対応を実施することもあるのが運用SEです。
ちなみに、IT業界の運用SEは、大手SIerの下請け企業が請け負っていることが一般的です。
企業の情報システム部・SIer・下請け企業の関係を図にすると、以下のようになります。
給料は、開発者より100~200万円程度劣ることはありますが、50歳を過ぎても現役で活躍している人も多く、将来のことを考えると職種を変更する価値があります。
以下のような求人が、運用SEの典型的な求人です。
運用SEに関して詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
3.Webエンジニア
SIerのピラミッドから抜け出したいなら、Webエンジニアもおすすめします。Web系サービスを展開している企業は、SIerのようなピラミッド構造を取っておらず、企業が直接エンジニアを雇用していることが多いです。
また、BtoCのサービスを展開している場合、自分の開発したサービスを分かりやすい形で他人に紹介することもできる喜びもあります。
Webエンジニアの典型的な求人例は、以下の通りです。
Webエンジニアについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください
4.フリーランスエンジニア
フリーランスエンジニアも、SEを脱出したいと考えた際に、候補に上がる選択肢です。特に、「煩わしいマネジメントや設計ではなく、プログラマーだけやりたい」といった人にも向いています。
企業に常駐して正社員と同じように働く企業常駐のフリーランス案件であれば、以下のような案件が典型例です。
70~80万円の報酬から、交通費・税金・保険料などを納める必要があるため、全額を使うことはできません。
しかし、現状あなたが下請けSEとして不当に搾取されているのが嫌なら、優良フリーランスエージェントに登録するのも選択肢の一つです。
特に、技術力があるのに入社した会社が悪くて条件が見合わないなら、間違いなくフリーランスに転身したほうがメリットが多いでしょう。
フリーランスエンジニアの働き方について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
5.ヘルプデスク
ヘルプデスクの仕事も、SE脱出後に選ばれやすい職種です。技術力がなくてもできる仕事なので、開発者としての適性がなかった人でも従事できます。
ヘルプデスクは、電話対応・別チームからの依頼作業など、比較的技術を必要としない仕事をこなすものです。
その分、給料は低くなりますが、マネジメント力を身に付けてリーダーになれば、労働条件を高められます。
以下のような求人が、ヘルプデスク求人の典型例です。
ヘルプデスクの働き方について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
6.教育系
教育系の仕事に就くのも、SEを脱出したいと考えたときに選択候補になります。IT業界で長年働いていると、人に教えられるレベルにまで成長しているものです。
例えば、僕はIT系の専門学校に通っていたのですが、講師陣は全員IT業界での就業経験がある人たちでした。
現場をよく知る人たちが実践的な教育をすることで、高校までとは違うすぐに役立つスキルを身に付けられたのです。社会に出て10年以上経った今でも多くの先生を覚えており、人の一生を左右するほどの大事な仕事といえます。
ちなみに、僕が通っていた専門学校では、20代後半の若い教師でも大活躍していました。
IT業界では日進月歩で技術が進歩しており、40~50代よりも20~30代のほうが最新技術を知っていることがあります。
以下のような求人が、教育系の典型例です。
劣悪な現場を脱出したいだけで、IT業界やIT技術が好きだというのなら、年齢が若くても教育業界は検討してもよいでしょう。
7.IT営業
IT営業の仕事も、SE脱出後に選ばれがちな仕事です。SEとしてのITスキルが至らなくても、SE経験さえあれば、別職種で活かせます。
そもそも、IT営業の中には、元エンジニアという肩書きの人は多くありません。
そのような中、SEをやっていた経験があれば、以下のような状況で効力を発揮します。
- お客様から求めているスキルを理解できる
- エンジニアの経歴をみて、どのようなキャリアを積めばよいかを指導できる
ようするに、企業とエンジニアの間に入ったときに、彼らの言葉を理解できるのが強みになるということです。
以下のような求人を見ても、エンジニアとしての経験が求められていることがわかります。
SE時代に、顧客との折衝が得意だったなら、IT営業への転身は選択肢に入ります。
8.ITコンサルタント
ITコンサルタントも、SEを脱出したい人が検討できる仕事です。開発の現場を卒業した上で、開発より高い報酬を期待できます。
ITコンサルタントといっても業務の幅が広く、会社によってやっていることは様々です。
ちなみに、求人を確認すると、以下のような仕事が見つかります。
経営戦略から地方創生まで、現在ではありとあらゆるところにITが入り込んでいます。
当サイトの管理人がIT業界から脱出しようと考えたときの話
ここからは、当サイトの管理人が、IT業界から脱出しようと考えたときの話をします。
僕は、本記事執筆時点で32歳のITエンジニアです。23歳からIT業界で働きはじめており、かれこれ10年程度のキャリアがあります。
現在は、フリーランスエンジニアとして人生を謳歌していますが、20代はずっと仕事と葛藤する日々でした。
20代前半でベンチャー挑戦・プログラマーに向いていないという挫折・運用SEへの転身など、自分でも激動の20代だったと自負するほどです。
この人生のうち、最も強烈にIT業界から去ろうと考えた時期は「プログラマー」の適性がないと気がついたときですね。
高校生の頃までは文系人間でしたし、専門学校時代の授業についていけなかったわけではないため、仕事として通用するレベルにならないというのはショックでした。バリバリとプログラミングする姿を想像してIT業界に進んだ身として、毎日人生を後悔したものです。
IT業界での転職失敗談とSEが転職で失敗しないための5つの条件
もし、そこでIT業界自体から離れていたら、挫折と後悔で今でもうちひしがれていたかもしれません。
しかし、その後は運用SEに転身することで、上手くIT業界に食らいついています。
給料は開発者と比べて見劣りしますが、IT以外できる仕事のない僕にとっては、これ以上の選択肢はないでしょう。
また、運用系のフリーランスエンジニアになってからも、ブラック現場に入場してしまい、メンタルがまいってしまったことがありました。このときも、「もうIT業界から離れたい」と感じたものです。
しかし、フリーランスの現場は契約期間さえ過ぎれば逃げ出せるため、今では超ホワイト現場で仕事ができています。
つまり、人生で二度、「IT業界から抜け出したい」と考えたことがあるのです。
僕の人生で、IT業界から離れたくなった状況を分析すると「合わない職場でメンタルを消耗してしまったこと」だと考えられます。
世の中には、仕事で追い詰められて自殺する人もいますが、おそらく近視眼的に極端な人生の結論を出してしまったのでしょう。僕も、「ITを辞めるか否か?」という究極の決断に迫られたことがあるので、仕事に悩んで死んでしまう人の気持ちはよくわかります。
しかし、「SEを辞める = IT業界から離れる」という図式は成り立ちません。
「今まで経験を積んできたIT業界に留まる」と決めてから、どのように生きるかを考え始めるのも手段の一つです。
まったく未経験の分野に向かうSEもいる
SEの中には、まったく未経験の分野に向かうSEもいます。家業を継ぐ人、製造業に向かう人など、ITから離れて新しい人生を生きる人もいるのです。
僕は、このようにITから離れることを否定しません。
IT業界はうつ病が多いのですが、農業を始めてメンタルが回復するエンジニアもいるぐらいです。僕もフリーランスエンジニアになってから、美味しい空気を吸うために田舎で暮らす頻度を高めて、心が充実するようになりましたからね…。
ITから完全に離れるのも一つの人生です。
また、IT業界なら当たり前だと感じるレベルのスキルでも、IT業界以外だと取り柄になることもあります。
例えば、僕には身内に建築業界の人が多いのですが、Excelのマクロで作業を自動化するだけでも神扱いを受けます。まるで、現代のリテラシーを持った人間が、過去にワープして活躍するアニメやドラマの主人公のようです。
そう考えると、IT業界から完全に離れた上で、ITスキルを活かす道もあるかもしれませんね。