コンピュータなしで生きることが考えられない現在、システムエンジニア(SE)が働ける場所は増えていく一方です。今後もSEの人手不足は続くため、一度でもITスキルを身につけたら、多くの企業に転職する機会があります。
その中でも、大手企業に憧れるSEは、常に一定数います。
今では大手企業が突然倒産の危機に陥り、外資系に買収されてしまうことも一般的になりましたが、まだまだ大手の安定性は健在です。大手がダメだからといって、中小企業の殆どが下請けである以上、大手を目指すのは当然だともいえます。
しかし、「自分がどのようなSEになりたいか?」という目的によっては、大手企業に入社するメリットがない人もいるのです。
周囲から求められているからといって目的もなく大手企業に入社してしまうと、エンジニア人生が失敗に終わってしまう可能性があります。
そこでこのページでは、「SEが大手企業に転職する前に理解しておきたいメリット・デメリット」について解説します。
Contents
大手企業(優良企業)で働く絶大なメリット
大手企業(優良企業)で働くと、中小企業やベンチャー企業では得られない絶大なメリットを受けられます。新卒入社でし烈な争いがあるのには、それ相応の理由があるのです。
具体的には、以下の3点は、大手企業特有のメリットといえます。
- 雇用の安定・給与・世間体が揃っている
- 規模の大きなシステムに携われる
- 人材の成長意欲とポテンシャルが高い
それぞれ、順を追って解説させて頂きます。
1.雇用の安定・給与・世間体が揃っている
大企業(優良企業)のSEは、雇用の安定・給与・世間体が揃っているのが特徴です。特に、グーグルのように儲けの仕組みを構築して、IT業界を牽引しているような企業では、年収1000万円を超える給与を支払っていることも珍しくはありません。
例えば、口コミが信頼できる「転職会議」様でグーグルを検索すると、以下のようになっています。
さすが天下のグーグル様といったところでしょう。
さらに、世間が知っている企業に勤めていれば、「あの有名な〇〇で働いているんですね!」となり、それだけで信用を得ることができます。
外資系ではリストラの不安があるというなら、日系の大企業に入社して、ほぼリストラのない優良企業に就職する手段もあるでしょう。
このように、大手企業が中小企業(下請け)やベンチャー企業よりも労働条件が良いのは、紛れもなく事実です。
2.規模の大きなシステムに携われる
大手企業に入社すると、大きなシステムに携わることができます。そこで開発(運用)するシステムは、全国規模に展開している会社の重要なシステムであることも多いです。
例えば、僕がフリーランスエンジニア時代に関わった大企業では、全国に店舗展開している量販店のシステムを構築していました。この企業では、千人単位のSEがソフトウェアの開発・保守・運用などを行っていました。
そこでは、中古本販売のベンチャー企業時代に動かしていた出品ツールとは全く違う、以下のようなことが意識された設計のシステムだったのです。
- 後から設計を知らないSEが読んでも理解できる体系だった設計書
- ユーザがサービスを利用しやすいように作られた補助ツール
- ユーザ側にシステムの不具合が発生したとき、即座に原因を解明して修正する仕組み
上記のように、大企業で動かすようなシステムがどのように運用されているかは、実際に大企業で働いてみないと理解できません。
大規模なシステムが数時間でもストップしてしまうと、賠償問題に発展してしまいます。そこで、大企業でつくるシステムは、不具合対策などがしっかりと取られた設計になっているのです。
反対に、ベンチャー企業が自作して運用しているようなシステムは、そこまでしっかりとした設計にはなっていません。人材やお金などのリソースもないため、システムの余計な部分にお金をかけられないのです。
つまり、大企業のシステムを設計して構築できるITスキルがあれば、大抵の場合ベンチャー企業に転職して適応できます。ベンチャー企業に転職するなら、開発手法の違い(ウォーターフォール型開発やアジャイル開発)に適応する必要があるぐらいでしょう。
ただし、大企業の大規模開発では、システムの一部分しか任されないSEも多いです。その環境に甘んじてしまうと、いつまでたっても自分でシステムを構築できないSEになってしまいます。
そのようなスキル感だと、転職先も同じような現場になってしまうことには注意が必要です。
3.人材の成長意欲とポテンシャルが高い
大手企業は、SEの成長意欲とポテンシャルが高いのが特徴です。会社全体で、資格取得を推奨しているところも多く、常にITリテラシーを一定以上に引き上げようとする傾向があります。
例えば、大手IT企業である「NTTデータ」およびNTTデータのグループ会社では、会社のホームページで資格取得者の数を公開しています。
一例として、NTTデータ関西へのリンクを貼っておきます。超難関資格の取得者が複数名おり、名実ともに大変すばらしい会社ですね!
大手企業は、会社全体でレベルの高いSEを育てていこうという気概があるのです。
また、従来の大手企業は、新卒一括採用を選択していることが多いです。そこでは、優秀な学生がしのぎを削って内定を取り合うため、人材のポテンシャルも高くなります。
一方、中小企業(下請け)の場合、上記のような優良大手に入社できなかった人間が入社する傾向があります。仕事内容やビジネスモデルなどで魅力を提示できないなら、成長意欲やポテンシャルも大手より劣ってしまいがちです。
なお、伸び盛りのベンチャー企業の場合、「ベンチャーにしか行けなかったやつ」と「あえてベンチャーに行ったやつ」に二分されます。特に、ビジネスモデルに将来性がある場合や、カリスマ性のある社長の会社だった場合、ものすごい成長意欲が高い集団になりえます。
一人ひとりが卓越した結果を出さないといけないほど余裕がないのがベンチャーなので、嫌でも成長しないとついていけなくなるのです。
ただし、総合的な成長意欲とポテンシャルでは、管理人ヤマダの肌感としては、ベンチャーは大手に負けています。
これまでの説明を図にすると、以下のようになります。
大手企業(優良企業) | 中小企業(下請け) | ベンチャー企業(伸び盛り) | |
成長意欲 | 中~高(働き方を選択できる) | 低~中 | 高(成長か退職か) |
ポテンシャル | 中~高 | 低~中 | 低~高 |
結論として、優良大手企業に入社できる力を持っているなら、一度入社してみてから将来のことを考えても良いでしょう。
大手企業で働くデメリット
これまでは、大手企業に勤めるメリットを説明してきました。
次に、大手企業のデメリットをお伝えしてきます。大手企業は多くのSEにとって憧れの存在ですが、全てのSEに適した場所ではありません。
例えば、大手企業のSEには、以下のような制限があることが多いです。
- 物事を成したいなら、数十年単位の信頼を積み重ねる必要がある
- 自分のやり方で仕事ができない
- マネジメント側以外にステップアップがない
大手企業に転職するときは、これらのことを意識してからにしてください。
1.重要な仕事を任されたいなら、数十年単位の信頼を積み重ねる必要がある
大手企業で大きな仕事を任されたいなら、数十年単位の信頼を積み重ねる必要があります。入社して間もない人間に、数十億~数百億円の仕事を任せることはあり得ないからです。
大手企業に新卒で入社したとき、最初は雑務から任されます。その後、主任→係長→課長→部長と進んでいくのです。
ここで、現実的に大きな仕事を任されているという実感が持てるのは、課長以上ではないでしょうか?
その課長になるのですら、熾烈な出世競争に打ち勝たないといけないのです。
そして、課長になる年齢層は、40代前後となります。
つまり、数年単位ではなく十年単位で信頼を積み重ねないと、重要な仕事を任せてもらえないのです。
一方、管理人ヤマダがかつて経験したベンチャー企業では、入社して一年以内に社内の重要な仕事を任せてもらえました。
小さな企業の仕事といってしまえばそれまでですが、それでも「人事・社内インフラ整備・業務の標準化」など、様々な仕事を任せてもらえたのは自己成長につながったのです。
このように、労働人生の序盤から所属組織における重要な仕事を任されたいなら、大手企業は向いていないことがあり得ます。
2.自分のやり方で仕事ができない
大手企業では、自分のやり方で仕事ができないデメリットがあります。業務が平準化されていることも多く、大抵新しいソフトウェアを使うだけでも許可申請が必要です。
例えば、単純作業を自動化するために、自動化ツールをインストールしたいと考えても、許可が降りるとは限りません。
他にも、業務フローを改善しようと思ったら、いちいち上司にお伺いを立てる必要があるなど、面倒事で溢れています。
一方、管理人がかつて勤めていたベンチャー企業では、何も仕組みがないところで仕事をしていました。
- 全国の社員とファイルを共有するためには、どうすればよいか?
- マニュアルは何で作るか?
- 社員のPCはどこから調達するか?
このように、社内で発生する多くの業務を、自分のやりたいように出来ていたのです。
むしろ、誰もやったことがないことをやるのがベンチャーなので、自分で工夫せざるを得ないところが、大手企業の仕事と最も異なる点でした。
- やりたいようにやらせてくれ!
このような心の叫びを持っているなら、大手企業はあなたの才能を殺してしまうかもしれません。
3.マネジメント側以外にステップアップがない
大手企業のSEは、年齢を重ねるとマネジメント側にステップアップするのが一般的です。技術者が足りないなら外部の会社から派遣させることも多く、彼らが作っているシステムを管理する側に回ります。
会社によっては、プログラミングなどの下流工程を軽視していることも多く、数年の開発経験を積ませた後はマネジメントをやらせる会社もあるほどです。
(噂によると、一切開発経験を積ませないまま設計させるような、恐ろしい大手企業もあるそうです。)
ウォーターフォール型開発で製造されるソフトウェアは、設計書通りにプログラミングできればそれでよいのでしょう。
しかし、世の中には高い技術力があるからこそ、成り立っているサービスも存在します。
そのような会社では、プログラマは価値のある仕事として尊敬されているものです。
自分が技術力を追求したいのに、入社した大手企業の都合でマネジメント側に向かうしかないのなら、これほど不幸なことはありません。
SEの働ける場所は、ピラミッド構造になっているSI業界だけではありません。
近年伸び盛りのWeb業界や、日本が得意としている組み込み業界などでは、技術力を評価してくれる会社もあります。
このような企業で働けば、年を重ねても技術力で仕事ができるのです。
正社員として働き続けるなら、最終的には優良大手企業に入社したいところ
SEの働き方は、多種多様です。近年では、フリーランスエンジニアになったり起業家を目指したりと、正社員とは違う働き方を目指す人も増えました。
しかし、正社員として働き続けるつもりなら、優良大手企業に入社する魅力は計り知れないものがあります。
- 安定雇用・給与・世間体
- 大きなプロジェクト
- 意欲の高い仲間
優良大手企業に入社すれば、世間が羨む生活を手に入れられるのです。
転職市場では、一般的に35歳を過ぎると市場価値が落ち始めます。正社員として生きていくつもりなら、35歳前後で優良大手企業に入社しておくと、やりがい・給与・ステータスなどの多くを手に入れる人生になるでしょう。