「ベンチャー企業」。
あなたは、この言葉にどのような印象を持ちますか?
- 未来のアップルになって世界に影響を与える会社
- 財務が不安定で、何かあっただけですぐに潰れる会社
- 将来自分が事業を立ち上げたときのために、実力を身に付けられる会社
人それぞれ、ベンチャー企業に対する印象は違うことでしょう。
僕は20代前半の頃、周囲の同級生たちが安定企業を目指すなか、ベンチャー企業に挑戦した経歴を持っています。創業当初の状態から拡大期を経験し、相当ビジネスマンとして鍛えられました。
そこでこのページでは、「ITベンチャーでの体験談」を語ります。あなたが転職する上で、参考にしてください。
Contents
管理人ヤマダのITベンチャー体験談
僕は、コンピュータの専門学校に通った後、普通の大企業ではなく、社員3名程度のベンチャー企業に就職しました。
当時は難関IT資格に突破していたため、安定した企業に就職することは可能でした。
しかし、将来的には自分で事業を持ちたいと考えていたため、思い切ってITベンチャーに挑戦したのです。
入社した会社は、アパートの一室で運営事務局されていた、ゴリゴリのドベンチャー。中古本をネット販売する会社でした。
当時は新しかった「フルフィルメントバイアマゾン」と呼ばれる、「Amazonが在庫を保管してくれて、売れたら勝手に配送してくれるサービス」を活用してドンドン売上を伸ばしていたところに、魅力を感じたのです。
最初は社員3人程度でしたが、退職時には15人を超える規模まで成長し、社内で発生するありとあらゆる業務を経験しました。
そこでの体験が、僕の労働人生の中で、最もハードワークで・人間関係のドラマがあり・初めての就職で刺激的で・会社の成長を楽しめてと、今振り返っても昨日のことのように思い出せるほどハチャメチャな体験だったのです。
ここからも、引き続きITベンチャー体験をお話しさせてください。
ありとあらゆる仕事が湧いてくる日々
前述した通りですが、僕がとあるITベンチャーに入社したとき、社員は3名ほどしかいませんでした。つまり、社内で発生する仕事は、何でも舞い込んでくるのが当たり前の世界です。
中古本の買い付け、中古本の出品業務、出品時間短縮化ツールのメンテナンス、業務マニュアル作成、社内インフラ整備、クレーム対応、一次面接対応など、ありとあらゆる業務を経験できました。
その中でも、業務マニュアル作成や社内インフラ整備をしているときは、特に楽しかったと記憶しています。自分の仕事を標準化して、誰でもできる仕事にするプロセスは、経営者的思考が求められる素晴らしい仕事です。
クレーム対応なども、ある程度テンプレート化した文章を用意することで、作業時間短縮に貢献しました。
こうして、ありとあらゆる業務を一挙に引き受けていると、「ぶっつけ本番で何でもこい!」という気持ちになります。これは、大企業で決まられた仕事をこなすよりも、泥臭い仕事をこなす耐性を身に付けられたと考えられるでしょう。
その後、フリーランスエンジニアになったり、IT系Webライターになったりして泥臭く営業をかけられたのも、このときの経験が大きいです。
ハローワークに求人表を提出しにいく日々。当初の連絡先は僕の携帯電話
このベンチャー企業で特に印象に残っているのは、ハローワークに求人を出しに行っていた時のことです。求人を出す費用すら惜しかったため、無料で活用できるハローワークをフル活用していました。
ただし、ここで普通の企業とは求人の出し方が異なるのがベンチャー企業というものです。
まず第一に、会社に人が全くいないことも頻繁にあります。そのため、求人に掲載される電話番号は、僕の携帯電話の番号になりました(笑)。
「一番若手の山田が、全力で面接のスケジュールを組め!」というわけです。仕事に全精力を費やしていた僕は、休日にかかってくる電話も全て対応していました。
通常の企業なら間違いなく問題になりますが、僕が楽しんで仕事をしていたこともあり、何ら問題は起きませんでした(笑)。
ハロワのおっちゃんに泥プレゼン
ハローワークに求人を出すこと自体は問題なかったのですが、ハローワークの求人システムには1つ問題がありました。
「求人を出したときはシステムの一番上に表示されるが、日が経つと下の方に埋もれてしまう」という問題です。
なるべく多くの人材を集めたいという社長の意向からすると、このシステムでは十分な応募者を集めることができなかったのです。
ここで、僕は裏技を見つけます。「一度求人を取り消した後、再度同じ求人を出すと、自社の求人がシステムの一番上に表示される」ことに気がついたのです。
しかし、言うまでもなく、この手法はグレーゾーンといえます。すべての企業が同じような求人の出し方をしたら、システムが破綻するのは明らかです。
でも、僕は求人を一番上に出したい…。
ここで、ハローワークの責任者のおっちゃんに対して、僕の泥プレゼンが始まります。
「スマン。おっちゃんよ。今はどうしても大勢の人を集めて良い人を取りたい時期やねん。
求人を何度も取り消して、常にシステムの上位表示させる手法がグレーであることは分かっている。
しかし、うちの社長は本当に頭が良い人やねん。ここで特別扱いしてもらえれば、将来多くの雇用を作り出せる人なんや!
特別に、今だけ常にシステムの一番上に求人を表示してくれへんか?」
上記のような話を、もう少し丁寧な言葉で伝えたところ、「特別に、おっちゃんがおるときだけは、コッソリ対応してやるわ」ということになりました。
これは、ベンチャー風大企業が綺麗なオフィスで綺麗な大企業相手に行う綺麗なプレゼンではありません。汚い僕が、ハロワのおっちゃんに行う泥プレゼンです。
そして、これこそが真のベンチャースピリットといえます。このような泥仕事を率先してこなすことが、自分が独立したときの本当の実力になるのです。
採用活動では、面接相手が大体年上(笑)
実際の採用活動では、面接相手が大体年上という事態に見舞われます。23歳で一次面接を任されたため、「普通の企業面接とはあべこべだなぁ(笑)」という気持ちで面接していました。
23歳の若造に面接されて、どのような気持ちになっていたのでしょうか…。失礼がないよう振る舞いましたが、至らないところがあれば、ごめんなさい…、といったところ。
なお、当時はリーマンショックから数年後です。
決して給与も高くない求人に対して、数十名の応募が来ることもあり、景気の悪さを実感していました。
当時は、未経験のITエンジニア職を探しても全く見つかりませんでしたが、10年も経たないうちに次はエンジニア不足が叫ばれるようになっています。このことからも、エンジニア職は景気さえ回復すれば、すぐに仕事が見つかる職種といえるでしょう。
個性が強すぎる同僚たち
こうして採用できた同僚たちは、皆さん強烈な個性を発揮する人たちでした。創業まもないベンチャー企業にくる人たちは、一癖二癖ある人ばかりです。
例えば、「ホストと引っ越しの仕事以外は、すべてのバイトを経験してきた」と豪語する同僚は、お寺にお坊さんになる修行をした後、某アダルトショップ店員を経て、うちの会社に入社してきました。
お坊さんからアダルトショップという落差にも衝撃を受けましたし、「一度はお坊さんになろうとしたからこそ、重みのある決断だな…」と、同じ男として妙に納得したものです。
ほかにも、プリキュア好きで我の強い人から、ブラック企業から逃れてきた人まで、濃いメンツが揃っていました。
特に、プリキュア好きの同僚は、社長に権利を主張して労働条件をアップさせたり、ウォーターサーバーの営業が来たときに勝手に契約したりと、イベントには事欠かない人で、面白い経験ができました。
僕だったら経営者の言いなりになりそうなところで、ガンガン自分の意見を主張しているのを目の当たりにして、「こんなにグイグイいっても大丈夫なんだな」と社会を理解できましたね(笑)。
このように戦う人が増えれば、ブラック企業の撲滅にもつながるのでしょう。
僕が働いていたベンチャーはブラックではなく「未来ある激務」でしたが、当サイトのメインテーマである「ブラック企業から抜け出してホワイト企業に手を貸そう」という発想は、この頃の体験が原点です。
社長自身も贅沢を捨てて事業に邁進するならまだしも、社長は贅沢しながら社員の労働条件が悪いなら、間違いなくブラック企業といえます。
あなたがブラック企業に勤めているなら、今すぐホワイト企業に手を貸すようにしてください。
ITベンチャーでの総括
以上、僕のITベンチャー体験談でした。
「ITの話なんて、1つもないじゃないか!」と感じさせてしまったかもしれませんね(笑)。
当時は、会社内の業務を自動化するツールなどが運用されていましたが、これは社長と外部のプログラマーが開発しており、ITエンジニアらしいことは出来なかったんですよ…。(エンジニアができないというのが、当時の転職要因になったぐらいです。)
しかし、ベンチャーというものは、仕事内容よりも「人との出会い」と「泥仕事の実践」に価値があると、僕は考えています。僕の泥臭い体験談にも、必ず価値があるはずです。
当時の社長は、現在では社員の平均年収1000万円の企業を作り出し、経営スクールの代表として活躍しています。現在の彼から教えを請おうとすると、数百万円もの費用がかかるのです。
そのようなハイスペック社長と席を隣り合わせにして働けたのは、ベンチャーならではといえます。この出会いこそ、ベンチャーの価値です。
未来のスーパースターでも、創業当初は人材確保に苦労します。そこでは、経歴に傷のついた人間でも採用しようという妥協が発生し、そこに潜り込むことで凡人でも天才の思考に触れられるのです。
また、このベンチャーで泥仕事を経験した結果、僕は以前より、たくましくなりました。
そもそも、世の中の平均的な生き方をしている人は、失敗を過剰に恐れすぎています。
僕が、20代後半でWebライター兼フリーランスエンジニアとして独立したときですら、「失敗したらどうするの?」と聞いてきた友人がいるぐらいです。
しかし、僕のマインドはすでに「失敗しようがしなかろうが、法律と道徳に違反しないことなら、何でもやりまっせ!(笑)」という気持ちに切り替わっています。
「自分に出来ることをやりきる!」
ただそれだけです。失敗して、すべてを失ってしまったら?
「自分には何も残っていない。そう呟く人には口が残っている」
口があれば、営業でも、ライターでも、教師でも、コンサルでも、占い師でも、お笑い芸人でも、講演家でも、YouTuberでも、何にでもトライできるのです。
このようなマインドを手に入れられたのが、ベンチャー企業での経験でした。
以上!