ITエンジニアが仕事をするとき、雇用形態が一つではないということに気がつきます。世間一般の会社員を指す「正社員」以外にも、派遣社員やフリーランスといった働き方が存在しているのが、IT業界の特徴です。
定年まで会社で働きたいのであれば、正社員として雇用されるのが一番でしょう。
しかし、IT業界は変化の激しい世界のため、安定した企業に雇用されるだけでも一苦労です。
倒産のリスク回避や将来的な独立まで考えるなら、様々な雇用形態から自分に適したモノを選択する必要があります。
そこでこのページでは、「正社員・派遣社員・フリーランスの働き方」を比較します。あなたにとって理想の働き方を見つけ出してください。
Contents
正社員
正社員は、ITエンジニアの中で、最もポピュラーな雇用形態です。特別な理由がない限り、世間的な人たちが学校を卒業したら、正社員での就職を目指します。
正社員として働く最大のメリットは、「長期間働くことを前提に採用されている」ということです。
- 新入社員として、先輩から業務を教わる
- 一人前に仕事をこなせるようになり、徐々に後輩に指導するようになる
- 役職がつき、上司として部下をマネジメントするようになる
- 役員や社長になる(とても有能であれば)
上記のように、階段をのぼるように仕事を覚えていくことができます。
将来的に、企業の中核を担う重要なポジションに就くのも、大抵は正社員です。
組織の中で出世していきたいと考えるなら、正社員の仕事を選択してください。
その他の、正社員のメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。
■正社員のメリット
- 長期的に働くことを前提に採用されており、生活が安定する
- 出世すれば、重要な仕事を任される
- 世間体が良い
■正社員のデメリット
- 成果ではなく、立場で報酬が決まることが多い
- 会社の都合で、やりたくない仕事を任されることもある
- 一つの組織に留まることで、他社では通用しない人材になってしまう恐れがある
以上が、正社員として働く上でのメリットとデメリットです。
また、正社員として働く場合でも、IT業界の場合は以下の2つの働き方があります。
- プロパー社員
- 協力会社社員
それぞれ、どのような社員なのか解説します。
プロパー社員
IT業界では、同じプロジェクトに複数企業のエンジニアが参画するのが一般的です。
このとき、プロジェクトの元請け企業を頂点とするピラミッド構造を取ります。
IT業界におけるプロパー社員とは、「プロジェクトの元請け企業の社員」のことです。
また、商品を販売する企業の社員もプロパーと呼ばれます。(例えば、アップルに雇用されて、アップルで働くエンジニアがプロパー社員です。)
プロパー社員は、「将来的にプロジェクトの中核を担う社員」として雇用されています。
- エンジニア→リーダー→マネジメント
上記のように、段階を踏んでステップアップしていきやすいのがプロパー社員です。
また、企業によってはコーティング(プログラミング)を軽視していたり、マネジメント以外のステップアップが存在しなかったりするのも、プロパー社員の特徴です。
しかし、ピラミッドの頂点に位置付けられているため、正しく企業を選べばプロジェクト内で最も良い条件で働ける機会が多いです。
協力会社社員
協力会社社員とは、前述のピラミッドにおける一次請け企業より下の企業で働く社員のことです。
IT業界では、プロジェクトによって必要になるエンジニアの人数が異なります。
しかし、ピラミッドの頂点に位置する企業も、常に大量のエンジニアを雇用しておくことができません。
そこで、プロジェクト内で人員を確保するとき、お金を払って他社のエンジニアを連れてきます。このエンジニアが、協力会社社員です。
協力会社のエンジニアでも、プロジェクト内で信頼されることで、重要な仕事を任されたり協力会社内のリーダー業務に携わったりできるため、自己成長の機会はあります。
しかし、ピラミッドの下側に向かうにつれて、給与等の条件は落ちてしまうのが特徴です。
協力会社社員から始めても、スキルの高いエンジニアになれます!
一般的には、プロパー社員よりも協力会社社員のほうが、条件が悪いことが多いです。
しかし、技術力だけで言えば、プロパー社員よりも協力会社社員のほうが高い逆転現象がしばしば起こります。
これは、プロパー社員が、ある程度の年齢で「マネジメント職」に進むことに原因が考えられます。卓越したスキルを持つエンジニアを使いこなすことのほうが重要になるため、深い知識や卓越したスキルは協力会社社員が持っていることがあるのです。
例えば、僕がデータセンターで運用SEとして働いていたとき、社内のネットワークに最も詳しいのは、直属の上司のSさんでした。Sさんは協力会社という立場ながら、努力が認められてプロパー社員のネットワークエンジニアにみっちりしごいてもらったそうです。
その後、プロパー社員が退職してしまい、ネットワークに最も詳しいのがSさんという状況になっていました。
Sさんは、出来ちゃった結婚をして大学を中退したため、ITエンジニア未経験から協力会社の社員として入社するしかなかったそうです。
しかし、そのような状況からでも社内で努力することによって、一流の技術を持つネットワークエンジニアになれています。
最終的には、僕が転職してから1年も経たないうちに、10年以上働いた会社を退職して、条件の良い会社に転職したそうです。以前は、自分のほうが実力が高いのに給与が安いことに不満もあったそうですが、次の職場は給与や人材のレベルも納得いくとのことでした。
プロパー社員であろうが協力会社社員であろうが、スキルが身につくかどうかは自分の努力次第です。そして、高いスキルを身につければ、転職市場で引っ張りだこになるのがITエンジニアです。
派遣社員
派遣社員は、派遣会社と契約を交わして、どこかの企業に派遣されて働きます。正社員と比較して、「非正規社員」と呼ばれる位置付けです。
派遣社員は、主に正社員の補助をする仕事などに従事します。仕事も比較的簡単なので、未経験からでもIT業界に潜り込みやすいという特徴があります。
また、仕事の責任もそれほど重要ではなく、気に入らない現場だったらすぐに職場を変えやすいです。
しかし、メリットばかりではありません。
時間給で働くため、ボーナスがなかったり長期休暇で給与が下がったりします。また、重要なポストにつけないということは、後々の転職で不利になるということです。
- 未経験からでもIT業界に挑戦したい
- 今は仕事よりプライベートを充実させたい
- 正社員の仕事を探しているが、つなぎの仕事をしたい
- 旦那が転勤族なので、自分はいつでも辞めやすい派遣で働きたい
上記のような理由があるなら、派遣社員になるのがよいでしょう。
■派遣社員のメリット
- 未経験からでも挑戦しやすい
- 仕事が比較的簡単
- 気に入らない現場だった場合、職場を変えやすい
■派遣社員のデメリット
- 重要なポストで働けない
- 時給で働くため、長期休暇で給与が下がるし、ボーナスがない
- 雇用が安定しない
フリーランス
フリーランスとは、個人事業主として独立する働き方です。いわば、「ひとり社長」として、一つ以上のクライアントと取引を行うようになるのが特徴です。
実力次第で、1ヶ月に100万円以上のお金を稼げる、夢のある働き方です。
また、会社員のように副業を禁止する規定などもなく、複数の仕事ができるのもフリーランスならではのメリットです。
しかし、どこかに雇用されているわけではないため、突然仕事がなくなることもあります。他にも、企業に育ててもらうことは期待できず、常に自己研鑽していないと、時代についていけなくなってしまいます。
■フリーランスのメリット
- 高い報酬を得られる可能性がある
- 会社の余計な社外活動に参加しなくても良い
- 同時に複数のクライアントと契約して仕事ができる(副業なども制限がない!)
- 携帯電話の通信費など、様々な費用を経費で落とせる
■フリーランスのデメリット
- 仕事が不安定
- 確定申告などが面倒
- 即戦力を期待される
なお、フリーランスには、大きく分けて以下の2つの働き方があります。
- 客先常駐フリーランス
- 在宅(持ち帰り)フリーランス
上記2つの選択肢は、同じフリーランスでも全く働き方が違います。
それぞれ、どのような働き方なのか、順を追って解説させて頂きます。
1.客先常駐フリーランス(協力会社社員と同じ立場)
客先常駐フリーランスは、1ヶ月当たり○○万円という業務委託契約を交わして、企業内で働くITエンジニアのことです。
言い換えるなら、正社員の項目で解説した「協力会社社員」という立場で働くフリーランスエンジニアということになります。
IT業界では、日々多くのプロジェクトが立ち上がっており、常にエンジニアを必要としています。建築業界が、建物を建てるときだけ職人を集めるのと同じイメージです。
そこで、フリーランスエージェント・協力会社・プロジェクト元請け企業などと業務委託契約を交わして、企業内で働くことができるのです。
(管理人は、レバテックフリーランスと契約を交わした経験があります。上記のように、封筒で契約の詳細が書かれた「注文書」が送られてきます。)
客先常駐フリーランスは、雇用形態が正社員と異なる以外は、普通の会社員と同じです。現在では、客先常駐で働くフリーランスエンジニア専門のエージェントが多数存在しており、簡単にフリーランスに転身できる仕組みが整っています。
また、フリーランスエージェントの中には、確定申告のサポートなどまで実施しているところもあるぐらいです。
副業などの規定が全くなく、主体的にプロジェクトを渡り歩いてスキルを磨けるため、これからドンドン流行っていく働き方が、客先常駐フリーランスです。
2.在宅(持ち帰り)フリーランス
在宅フリーランスとは、自宅でできるプロジェクトを受注して仕事を行うITエンジニアのことです。仕事内容は多岐に渡りますが、個人で開発するのに適しているような小規模システムを開発するのが一般的です。
仕事の受注方法は、会社員時代の人脈を生かしたりインターネットのマッチングサイト経由で受注したりと、さまざまな方法があります。また、受注の規模が大きくなるにつれて、受託開発専門のソフトウェア会社を創業するような話も、IT業界ではよくある話です。
客先常駐SEとは違い、働く時間や仕事量、休日まで自由に決めることができ、働き方の幅が大きいです。
管理人ヤマダは、在宅でフリーランスITライターをやっていた経験があるのですが、「ある月はお金のために休日0で働き、翌月は旅行のために10連休を作る」みたいに、全て自分の裁量で働くことができました。
仕事毎に納期があり、締め切りに追われることも多いですが、そもそも「その納期で仕事を受注するか?」という判断も自分でするものです。つまり、自分の行動の全てに責任を持つ必要があるが、その分裁量を持って働けるのが在宅フリーランスの特徴といえます。
プライベートを捨ててお金に走るのか、最低限だけ働いて後はノンビリ暮らすのか、決めるのはあなた次第です。
比較表
本日紹介した、正社員・派遣社員・フリーランスの3つの働き方について、仕事の難易度や安定度、さらに給与を比較すると以下のようになります。
正社員 | 派遣社員 | フリーランス | |
仕事の難易度 | 中~高 | 低 | 中~高 |
仕事の安定度 | 中~高 | 低 | 低~高 |
給与 | 中~高 | 低 | 低~高 |
未経験からでも何とかIT業界に潜り込む場合や、フルタイムで働けない事情があるなら、派遣社員がおすすめです。仕事の難易度は低く給与は安いですが、責任の軽い仕事なのでダメもとでチャレンジできます。
安定した立場で、一歩ずつ会社員のレールを進んでいきたいなら、正社員という立場が最も安心です。仕事の難易度・安定度・給与など、すべてがバランスよく揃っています。
自分の実力をお金に反映したいと考えているなら、フリーランスがおすすめです。在宅フリーランスの場合、月数百万円を稼ぐエンジニアも珍しくない世界です。
ただし、景気によっては突然仕事がなくなることもある立場なので、正社員でしっかりと実力や人脈を培ってから独立する必要があるでしょう。
このように、IT業界には正社員だけではなく、さまざまな雇用形態で仕事ができます。自分の人生に何が必要かによって、取るべき選択肢が異なるため、周りのITエンジニアの意見に流されずに自分の人生を見つけ出してください。